自宅からすぐ近くの所に、青空ショッピングセンターと呼ばれる所がある。70年位前戦後の混乱時代に建てられたものである。そこにはあらゆる食品が山積みされていた。野菜、果物、魚、肉、乾物、日用品なんでも揃っていた。すぐ横には露店の青空市場があり、道路の上には野菜果物を中心に並んでいた。時にはアオウミガメの卵なども並んでいた。そこはまるでアジアの国にあるバザールみたいな所だった。朝早くから夜遅くまで人は行き交い、宮崎市内では一番の繁華街であった。しかし最近はスーパーなどに取って代わられ、だんだん廃れていった。露地の青空市場は閉鎖され、バージニアビーチという公園になり昔の面影は全くない。
小さな店の寄せ合わせになっていた青空ショッピングセンターも訪れる人が少なくなり、次々と閉店していった。今現在営業しているのは高齢男性が経営している豆類販売店のみだ。入口には『危険ですので立ち入らないで下さい』と言う看板があり、中には入れないようになっていた。その市場の建物は台風などにより少しずつ壊れていき、大きな木がその屋根からニョキっと顔を出していた。それが先日の大雨で夜中に建物の屋根ごとペシャンコになっているという。駆け付けてみると、道路には『壊れることがありますので歩行注意』という看板が立っていて、ポールが置いてあり道路の半分は通れないようになっていた。
壊れそうな建物をなぜそのまま放っておいたのかという理由。それは100坪位の土地に80人以上の地権者がいて、その人達の中には全く連絡が取れないので話が進まなかったしい。何せ戦後すぐのことなので中々地権者同意を求めるのは難しかったのだろう。そこでそのままほったらかしになっていたのだ。しかしやはりこのままではいけないと市の方も動いているという。
私が幼少の頃はここが遊び場だった。当時としては珍しく店先同士がアーケードで繋がっている。雨が降ってもそこで遊ぶことが出来るのだ。アーケードと言っても杉板にコールタールを塗ったお粗末なものであったが、雨の日でも自由に遊べるというのは魅力だった。
私が生まれた頃に出来た建物が目の前で崩れ落ちてきている。それはまるで体の至る所にガタが来ている私と一緒である。何れ建物も私の体もある日突然崩れ落ちるかもしれない。自分の姿と重なる出来事を目の当たりにして考えさせられる一日だった。