ロングヘアが自慢の孫娘が、突然坊主頭にしたいという。どういう心理の変化なのか分からないが、どうしても坊主頭にしたいというのだ。私は最初は冗談だと思った。家内がヘアドネーションの話をしていたのでてっきりヘアドネーションの為に切るのだろうと思っていたのだが、全くそうではないらしい。「女の子なのに丸坊主にしたらいじめられるかもしれないから、もうちょっと考えてからした方が良いんじゃない?」と言っても首を縦に振らない。家内も「やりたいと言うのだからやらせてあげたら良いんじゃないの。本人がどうしても坊主頭にしたいと言っているんだから…」。そう言われたら何も言えない。
ずっと伸び続けた髪はもう肩の所まで延びている。そこで「せっかく切るのだからその髪をヘアドネーションしたら良いんじゃない」とヘアドネーションの話をした。抗癌剤を使ったりして髪の毛が抜けてしまう女の子達は、病気のことより髪が抜けていくことの方が気がかりだという。何せお年頃。頭の毛が治療中に薄くなってくることはきっと一番気になることだろう。隠す為にバンダナを巻いたり、ベレー帽を被ったり、ヘアウィッグを買ってそれを隠そうとするのだ。そして見られるということが嫌ということで積極的な活動が減ったりもする。
孫娘が坊主頭にすれば今のロングヘアは見られなくなる。そこでその前に写真をたくさん撮った。この髪を切って丸坊主になるなんて想像もつかない。そう思いながらシャッターを切り続けた。娘もこれが見納めとその姿を残す為フォトスタジオに連れて行った。
その日が遂にやって来た。髪を切り終わり帰って来たのだ。その姿を見るまでは全く不安だった。サザエさんのカツオ君のような感じになって帰ってくるのだろうかとドキドキしながら玄関のドアが開くのを待った。遂に登場。全く違和感がない。女の子の坊主頭ってこんなにかっこ良いものなのかと鳥肌が立った。つい無意識に「可愛いよ」と声をかけた。髪の毛は31cm以上あり合格した。何れその髪は病気と闘っている少女に無償で提供される。きっとその送られた少女は大喜びするはずだ。
ヘアドネーションをしたいというよりも坊主頭にしたいという孫娘の願い事から起こった出来事。それが世の中の為に役に立つということに繋がったことはとても良いことだと思う。2、3日して孫娘曰く、「とても涼しくて快適よ」。ヘアドネーションしたことなどもうすっかり忘れているようだ。