5月といえばまず思い浮かぶのは鯉のぼりだろう。街の至る所に鯉のぼりが泳いでいる。それはまさに5月の風物詩だ。

 先日あまりにも天気が良いので、都城の庄内川にある鯉のぼりを見に行った。堤防にたくさんの鯉のぼりが泳いでいる。その数150匹。その日は風が強く鯉のぼり達が元気よく泳いでいる。その姿はまさに壮観である。鯉のぼりに近付いてよく見ると、鯉のぼりそのものに名前が入っている。そう、それはかつて各家庭で飾られていた鯉のぼりを譲り受けたものなのだ。いわゆるリサイクル利用である。新しくないので所々色が覚めた部分があったりするのが時代を感じる。きっとその家では男の子が生まれたので庭先に飾ったのであろう。

 都会では中々高さ4~5mもある竹竿に鯉のぼりを泳がせるというのは難しい。しかし宮崎では市街地を外れると庭付きの家が多く、たくさんの鯉のぼりが泳いでいる。孫の男の子が生まれた時はその鯉のぼりに子どもの名前の旗を一緒に飾ってあることもあり、その子の名前が分かるようになっている。きっと名前には色々ないわれがあるのだろうと、それを見ながら想像する。最近はルビをふらないと分からないような名前が多く読み方は分かりづらいが、家族でああでもない、こうでもないと首を捻りながら決めた名前であることは間違いない。

 私は自分の名前にコンプレックスがある。二郎という名前だが、『二郎』という名前なのは兄が『一郎』だったので生まれる前から決まっていたらしい。もし私の名前が鯉のぼりに“二郎”と飾られていても、字体からしてあまり見栄えのしないような気がする。しかも次男なのであることは一目瞭然である。それでも幼い時自宅の庭に5m位もある鯉のぼりが空を泳ぐ様はやはり嬉しかった。

 私の家の玄関の手すりにも小さな鯉のぼりが飾ってある。6年前に3人目にして初めての男の孫が生まれたのを記念したものである。それは1mにも満たないミニ鯉のぼりである。どんなに小さくても鯉のぼりは鯉のぼり。やはり鯉のぼりは男の節句には不可欠なものである。たとえアパートやマンションなどの狭い部屋でも、100円ショップなどで小さな鯉のぼりを買い求めて飾ると良いと思う。鯉のぼりを飾る習慣はずっと続いて欲しい。その姿を見ると何か生きる勇気を貰うからである。