私は閉所恐怖症である。狭い空間にいると何となく不安になるのである。何故か?考えてみると、そのルーツは小さい時に悪いことをしてよく押し入れに入れられたせいかもしれない。

 例えばエレベーター。デパートなどの大きいエレベーターは何ともないのだが、4~5人乗りの狭いエレベーターに乗ると、早く希望の階に着かないかとイライラしながら乗る。タクシーに乗る時もそうだ。乗り込むとすぐ窓を開ける。先日寒い日に乗った時に窓を開けたら運転手さんがキョロキョロ回りを見渡し始めた。すると「寒いと思ったらお客さんが窓をお開けになったんですね」。ちょっと怒ったように口を尖らせて言われたので慌てて窓を閉めた。

 TVで時々潜水艦内の映像が流れるが、それを見ただけで心臓がバクバクする。こんな狭い所で働いて何ともないのか不思議である。そして時々潜水艦が沈没したニュースなどを目にした時は、気絶しそうになる。真っ暗な中で酸素が泣くなり亡くなるのである。考えただけでパニックになる。

 そういうことで車はいつもオープンカーを選んできた。最初に選んだのはジープである。米軍の中古車を見つけて買った。ウィルスのジープである。クラッチがダブルクラッチになっているので、二度クラッチを踏んでギアチェンジをしなくてはならない。ちょっとテクニックが要る。渋滞していると何回も踏まないといけないので足が疲れてくる。幌はついていたのだが最初から外して走った。フロントガラスが前に倒れるようになっていて、もろに風が顔に当たる。しかしそれが実に気持ち良いのだ。ジープ愛好家の人達の気持ちがよく分かる。

 次がスズキジムニー。これも幌を外して走った。一度極寒の真冬にそれで高千穂まで行った。雪が降る位寒い日だったので、鼻水が出るとそれが凍って垂れ下がった。高千穂に着いた頃には低体温症になっていて、体が氷のように冷え切っていて、車から降りるのも一苦労だった。

 次に乗ったのがホンダの黄色のビート。軽自動車初のオープンカーだった。軽快に走るのだが何せ660ccの排気量。坂道になるとアクセルをいくら踏んでもスピードが出なかった。

 考えてみれば色々なオープンカーを乗り継いできたものだ。私の閉所恐怖症は一生治らないだろう。だからそれを克服するしかない。それは私にとって中々ハードルが高い問題だ。一つ心配なのは亡くなって御棺に入れられる時。しかしその時はもうこの世にいないので大丈夫。安心して御棺に入ろう。