街を歩くと至る所にコンビニがある時代になった。‘74にセブンイレブンがコンビニ1号店としてオープンして50年近くになる。
コンビニのなかった時代、関東のある田舎町に、昔ながらの商店街があった。当時は朝10時から店を開け、夜の8時には閉めるのが普通だった。働くのは昼、寝るのは夜というのが当たり前のような生活習慣があったからだ。ところが何軒かの商店がある中に一軒だけダントツの売り上げがあった店があった。店員の愛想がいい訳でもない。場所が特にいい訳でもない。安くしている訳でもない。時間も他の店と同じ時間帯の営業だ。
不思議に思った近くの商店主が「あなたの店は我々と同じ条件なのに何故そんなに繁盛しているのですか」と尋ねると、突然店のシャッターを降ろした。尋ねた人が首をひねっていると店主がシャッターを指示した。シャッターの外側には「当店は夜8時までの営業です。明朝は朝10時からです。但しお急ぎ方は横にあるインターホーンを押してください。夜中でもいつでもお売りします」。
この話をアイデアにしてコンビニが誕生したのだ。最初は夜11時頃閉まっていたが、今は24時間営業になって利用する人にとっては本当に便利になった。
コンビニの良い所は、すぐ近くにあるということだ。一店舗当たりの商圏は半径500mだ。つまり500mおきに店があるという計算になる。歩いて10分、自転車で3分、車で1分の店があるので、家に食料などを大量にストックする必要もない。食べたいものを食べたい時に食べられるという便利さは一度経験するともう手放せない。
また夜中でも店内に人がいて、一人暮らしの人にとって人恋しい気持ちになった時に行けるということである。夜間コンビニに行き何か買う訳でもなく、店内をブラブラして、立ち読みをしている若者によく出会うが、そう人達のほとんどはコンビニの灯を求めてくる人なのだ。一人で部屋にいるのは寂しい。かといって人と会話するのは煩わしいという人達が買物以外にコンビニを利用しているのである。
ところが時間、空間、仲間の三つの間を生かしたコンビニも今や戦国時代に入って飽和状態になっている。あと10年後にはどういう風になっているのか気になる世界だ。因みに昨年の全国のコンビニの売り上げは11兆1775億円。利用者が1回の買い物で支払う平均客単価は721円。全国にある店舗数は約5万6000軒。人口減少を背景にして前年より100軒以上減少している。