高松通りの西の外れに、昔ながらの八百屋がある。間口が3mもない狭い店で、よく気を付けて通らないと見落としそうな店である。老夫婦と息子さんの3人で店を切り盛りしているらしい。今の時期入口の所にみかんが置いてある。スーパーなどでは出回らないようなみかんだ。それは普通のみかんの半分位の大きさしかなく、見かけはプアな感じであるが食べるととても甘い。スーパーでは当たり外れがあるが、このミカンは外れがない。但し小さい分、手の大きい私には剥きにくいのが欠点である。

 そのミカンのカゴの後ろには柿が置いてある。それは大きな柿で私の握り拳位である。その横にそのうち熟して売り物にならないような柿がぽつんと置いてある。持ち上げるともう潰れそうな超熟柿である。私はこの超熟柿が大好きである。今までは給食があったので、果物は近くの店から配達してもらっていた。その際熟れて売り物にならないような柿を時々持ってきてくれていた。それが楽しみだったのだが、入院がなくなりそこから分けてもらうことが出来なくなった。そんな時この店を見つけた。それからその店の前を通るとその柿がないかいつも探しながら通る。

 話は変わるが、今住んでいる実家には何本も柿の木が植えてあった。全て渋柿であったが、父が挿木をして不思議なことに甘柿になっているのである。父がハシゴを使って鈴生りになっている柿をもぎ取る。しかし手の届かない高い所にある柿は取れないので、そのまま生りっぱなしになっている。暫くするとそれを鳥達がついばみ始める。しかし中には甘柿にならず渋柿のままになっている木もあった。それらの柿はもぎ取った後に焼酎の入ったカメに暫くつけておくのである。するとそのうちに甘柿に変わる。不思議なことに渋柿の渋抜きの方が甘柿よりも甘く感じるのだ。

 さてその店先で買い求めた熟した柿をどうやって食べるのか?それはヘタの部分を切り取りお皿に乗せ、スプーンで中身をえぐっていくのだ。トロリとした甘さが口の中に広がっていく。家内はそんな私を見て「よくそんな熟した柿を食べられるわね!」と言うが、これが柿の最高に美味しい食べ方なのである。店に置いてある熟していない柿は1個150円もする。硬いので熟するまで何日もかかる。その点この店先の隅に置いてある超熟柿は私にぴったりの一品である。暫くはこの超熟柿から目が離せない。