さて、今日は仕事も終ったし、ビールでも飲んで寝るか!台所にある冷蔵庫を開け、ビールを取り出す。中々冷えていて美味しそうだ。ついでにこの前買ったカマンベールチーズを取り出す。そう言えばその時にホタルイカの沖漬け、サラミ、明太子も買ったんだった。今日はたくさんのツマミで豪華に飲める!

 さて飲むぞと缶ビールをコップに注ぎ、テレビのリモコンのスイッチを入れようとした時である。ピッ、ピッ、ピッと音がする。はて何の音だろう?キョロキョロ見回すが何の音か分からない。その音はようやく聞こえる位の大きさなので耳を澄ましてその音の方に近付いてみた。

 どうも台所の方からしているみたいだ。そっと台所を覗いてみると、音が少しずつ近付いてきた。その音は冷蔵庫から出ているらしい。冷蔵庫を見ると、ほんの少し扉が開いていた。

 そうかこの冷蔵庫、この前買ったばかりだが、閉め忘れるとこんな風にピッ、ピッ、ピッと音がして、無駄なエネルギーを使わないようにしてくれるのだな。感心、感心。暫くしてその音が鳴る度に「ほら、誰か冷蔵庫開けっぱなしだぞ」と、人に注意する楽しみが増えた。

 ある日、朝起きて歯を磨いていると、又例のピッ、ピッ、ピッが鳴っている。しかし今度は3回鳴ったらおしまいだ。顔を洗うと又ピッ、ピッ、ピッと鳴る。台所に向かって、「ほら、又誰か冷蔵庫開けっぱなしだぞ」と大声で怒鳴った。

すると家内がお風呂場から顔を出し、「今のはね、洗濯機の音なの。水が一定になるとピッ、ピッ、ピッ。洗濯が終わるとピッ、ピッ、ピッ。脱水が終わると又ピッ、ピッ、ピッと鳴るの。主婦は家の中を忙しく動き回るから、こうやって教えてくれると何かと便利なのよ」。

 なるほど、ナガラ族の主婦にとっては、何気ないピッ、ピッ、ピッは大事なサインなのだ。最近はこの他にも台所にある電気釜も炊き上がると、ピッ、ピッ、ピッと音がする。「炊きたてご飯が出来ましたよ」というサインらしい。しかしそれにしても、家中ピッ、ピッ、ピッとまあうるさく一日中音がするものだ。家に帰ってピッ、ピッ、ピッと言うと、直ぐに飯と風呂と布団を用意してくれる奥様がいれば、ピッ、ピッ、ピッも許されるのにと思っているグータラ亭主の私である。