竹尾康男先生が亡くなられた。竹尾先生は耳鼻科の先生で、宮崎市内で昭和43年に開業された。仕事ぶりはもの凄く真面目で、出かける際は何かあればすぐに戻れるように公衆電話から何回も医院に電話をされたという。携帯などない時代なので、その苦労は想像にかたくない。それと『みやざきエッセイストクラブ』の会員で私の仲間であった。いつも物静かでユーモアがあって、本当に紳士であった。その文章は実に洒落ていていつも感心していた。
竹尾先生が夢中になっておられたのが写真。時間を作っては色々な所に出かけられ、素晴らしい写真を撮っておられる。先日遺作展が開かれた際、その写真上達のコツというメモを見せてもらった。それには次のように書いてある。
①他人の指導を当てにするな。自分で戦うという覚悟を持つ。②他人の作品を多く見る。自分の作品を他人に見せる。自分の殻を破る。③被写体をじっくり観察し深く考える。④安全圏の範囲の撮影から脱出せよ。失敗のうちで最大のものは、失敗していることを自覚していないことだ。1つの失敗で1つの学習をする。なるほどその通り。
私も写真が好きでいつもカメラを持ち歩き、良いシャッターチャンスがあるとパチリと一枚撮る。自分のイメージとぴったり合う写真が撮れた時の嬉しさはカメラ好きにしか分からないだろう。20年位前までは全てフィルムを用いて写真を撮っていた。フィルム1本で24~36枚しか撮れないので、気楽にパチリ、パチリとはいかない。それからデジカメが登場しあっという間にフィルムというものが消えていった。気が付くと今やデジカメではなく、スマホの時代である。今デジカメを持ち歩く人は少なくなった。
そういう私もスマホで写真を撮りまくっている。いつでも持ち歩けるのでシャッターチャンスを逃さないのだ。私のスマホには2万枚近くの画像が残されている。それをパソコンを使えばプロの写真みたいな作品が出来上がるのだ。昔のように重い機材を持ち歩かなくて良いので実に便利である。
しかしそうはいっても、フィルム時代に露出やシャッタースピードを考え心を込めて撮った写真はやはり良いものだ。私はそのような写真を「魂の一枚」と呼んでいる。しかし今やスマホの便利さにすっかり負けている。そこがちょっと悔しい。