新しい隠れ家を見つけようと思い車を走らせていたら、道路沿いにある看板を見つけた。そこには『森のレストラン入口』と書いてあるだけで、肝心の店はさっぱり見えない。一体店はどこにあるのだろうと山林の中を分け入って行くと、雑草の生えた駐車場がある。車を降りると、駐車場の回りに『ヘビ注意』の看板が何本も立っている。車を降りても、店がどこにあるか分からない。その横に小さな橋が架かっているのでそれを渡ると、ずっと向こうに店らしきものが見えてきた。

 入口に『部外者立ち入り禁止。17台の監視カメラで監視しております。発見次第通報します』と書いてあり、山小屋をレストランに改装したものらしい。近くまで行っても「入口は?」と思うような作りになっている。どうやらひょろ長いエントランスを入った所が玄関らしい。

 中に入ると、又それから更に奥まった所にドアがあり、人の気配は全くない。恐る恐る「すみません!」と声をかけると、奥の方から「はーい」と声がした。まぁとりあえず靴を脱いで上がる事にした。中に入ると建物が雑木林に囲まれたところに建っているのに気が付いた。テラスに出て見ると滝があり、葉の落ちた寒々とした雑木林が広がっている。テラスの壁に次のように書いてあった。

『お詫び。食事中に虫が飛び交います。食事中に施設内に小動物が出ます。食事中に雨が打ち込む事があります。施設の立地上、大変ご迷惑をかけますが十分ご理解の上御利用下さい。なお、食事注文前でしたらキャンセルされてもかまいません』。

またメニューの下の方に小さな字でこう書いてある。

『一般的に刺身などの生食は食中毒のリスクがあることを御理解いただき、御高齢、お子様、抵抗力の弱い方の生食は控えて頂きますようお願いします』。こんな注意書きを見るのは初めてである。確かに九州地方では鶏の刺身はカンピロバクターによる食中毒をおこしやすい。よく新聞に鶏の食中毒のニュースが載っていて、その為に休業させられる店も珍しくない。だから注意が必要なのである。しかしそんなことを気にしていたら何も食べられない。

雑木林の中でコンロで焼く地鶏は硬くてコリコリしている。かなり噛んでからでないと呑み込めない。刺身もジューシーで美味い。自家製こんにゃくはこんなの初めて食べたという程美味しかった。

 満腹になり店を出ると出口にフクロウが立っていた。「変な店ですがまたお越し下さい」とそのフクロウが呟いているように見えた。