家内と二十年振り位に二人だけでドライブをした。決して今まで仲が悪くてドライブしなかったわけではない。二人だけで乗る機会がなかったからである。それは子どもが一緒だったり、孫が一緒だったりして、いつも何人かで移動していたからだ。しかし今回はたまたま子ども達と別行動になり、二人だけで出かけることになったのである。

 家の中でもお互い忙しく、あまり二人で食事をしたり会話したりすることがない。又孫が遊びに来るので、その相手が大変なのである。だから殆ど二人だけの会話がない。連れ添ってそろそろ金婚式を迎える年齢になったのに、二人でゆっくり話すような時間がなかったのだ。それが突然二人だけのドライブというシチュエーションになった。

 以前は二人で色々な所に出かけた。沖縄、長野、伊豆何れも楽しい思い出がたくさんある。沖縄ではスキューバーダイビング、山育ちの彼女は海の青さに大感激、ハリセンボンを捕まえスープにして食べたのが最大の思い出である。長野では中山道の宿場街で三度笠を被り、まるで江戸時代のような恰好をした。伊豆では海の直ぐそばの民宿で将来のことを語り合った。当時は話すこともたくさんあったような気がする。別れる時もまだ何か話したくなるような気持だった。まぁラブラブだったのかもしれない。しかし結婚して五人の子どもが生まれ、六人の孫が出来、中々お互いに自分の時間が持てないのである。『まぁ夫婦でそんな話なんかしなくても何とかなるさ~』という気持ちだった。

 さて二人だけ車に乗り、何も話すことはないと思っていたら、出るわ出るわ老後をどうするか、私の食事の件、子ども、孫達の将来のこと、実に色々なことを話した。

 家では“メシ”“フロ”“ネル”の三語族なのにこんなにも夫婦で話すことがあるなんて自分でも驚いた。寡黙な私がおしゃべり好きな私に変身しているのである。お互いにまだ知らないこと、分からないこと、理解出来ない事などが沢山あるということが分かっただけでも大きな収穫だった。

 西都に着くまでのたった四十分間、一年分の時を過ごしたような気がした。西都に着くと数えきれないコスモス達が私達夫婦を歓迎してくれた。コスモスは家内の一番好きな花である。それを一緒に見ることが出来て幸せだった。