母に手紙が来た。8年振りにである。それまでは毎年ハガキが来ていた。それは海外旅行の案内パンフである。母は父が亡くなった後、その悲しみを癒す為に海外旅行をするのを楽しみにしていた。

 その旅行に行ったツアー会社から毎年お誘いのハガキが来ていたのだ。行ったのはもう50年近く前。余程楽しかったのかその旅先の写真がいつも応接室に飾ってあった。その母も13年前に95歳で亡くなった。それでも100歳になるまではそのハガキが届いていた。それをいつも私は楽しみにして机の上に置いていた。

 何故その会社に亡くなったと断りの連絡をしなかったのか?それは天国に居る母に手紙が届いているような気がしていたからだ。

 いくら元気なお年寄りでも100歳になったらさすがに外国には行かないだろうとこの会社も判断し、送って来なくなったのだろう。(しかし今や100歳超えても海外旅行する人がいる)それでちょっとがっかりしていた。すると久しぶりに送って来たのだ。

 今度は全く違う所から。宮崎市の環境部廃棄物対策課からである。それによると1977年(昭和52年)以前の建物の照明器具にはPCBが使われているものがあり、もし使っていれば連絡下さいというものである。母が住んでいた建物は1942年(昭和17年)に建てられたもの。1999年までそのままあったが、2000年(平成12年)に私が開業する為にその建物を壊し、今のたにぐちレディースクリニックが建ったので、現在はもうないのだ。しかしまだその古い資料が市役所にあったのだろう。その為わざわざ連絡くれたらしい。

 それにしても久しぶりの母への手紙。何かラブレターを貰ったみたいにドキドキする。天国に居る母も、きっとそんな私を見て苦笑いをしていることだろう。ちょっと涙ぐむ手紙だった。

 因みに母が生きていれば109歳となる。(明治43年6月10日生まれ)