毎年お正月になると家に引きこもります。あんなに出かけるのが大好きな人間なのに意外だと言われます。しかしお正月は出かけたくないのです。その最大の理由はどこへ出かけても人又人だからです。人が沢山いる所に行くと気持ち悪くなります。いわゆる「人に酔う」といわれるものです。お酒を飲んでいる訳ではないのに、何か気分が悪くなるのです。多分それは人がそれぞれに動くので、それに目がついていかないのだと思います。だから出ません。

 と言ってもやはりお墓参りだけはしなくてはなりません。そこで元旦の日にお参りをします。お正月でお墓参りの人が沢山来ると思っていると、ほんの数人です。停まっている車も4~5台「えらく空いているね~」と家内に話かけると「そうね、お盆みたいに交通規制しているかと思ったらガードマンの人さえいないわね」。確かにそうですお盆の時に来ると、入口の所にガードマンが立っていて交通整理をしています。車も停めるのに苦労します。なんか拍子抜けしました。

 墓地内に入ってみて分かりました。普通はお正月をご先祖様と迎えるために年末にお墓参りをするのです。回りを見たら綺麗ななお花が飾ってあるお墓ばかりです。うちみたいに枯れたお花がそのままになっているお墓はどこにも見当たりません。

 考えてみればその通りです。お正月を清々しい気持ちでご先祖様に迎えていただくには、年末に来てその準備をしなくてはならないのです。ちょっと恥ずかしくなりました。「お父様、お母様ごめんなさい。早めに来なくてはならないのにお正月に来てしまって…」

 線香をあげていると「良いのよ、二郎。来ただけでも偉い、偉い。私達もずっとそうしていたの。だから気にしなくても良いのよ。次回も無理して年末に来なくて良いのよ。お正月で充分よ。それよりこれからも二郎頑張ってね。それでは…」そんな声が墓の中から聞こえたような気がしました。気のせいでしょうか?

 やはり来年もお正月の元旦に来ますから宜しくと一言呟いて帰りました。お正月になってお墓参りするのは谷口家代々のしきたりかもしれません。今頃になって、それが普通じゃないことに気付きました。