窓を開けると金木犀の香りがしてきます。この香りが毎年私に秋の訪れを教えてくれます。今年初めてこんもりと茂った枝を切りスリムになったので、いつもより香りが少ない気がします。

 その横に銀木犀もあります。こちらの方は近づかないと香りはしないのですが、やはり良い香りがします。この二本の木は父が植えたものです。別々の所に植えてあったのですが、20年前にそれを私が隣同士に植え替えたのです。

 それは私の父、母のように仲良く寄り添って立っています。この金木犀、銀木犀が香る度、亡き父と母をいつも想い出します。

 しかしこの香りが続くのもたった一週間ほどです。その後この花達はまるで粉雪のようにパラパラと舞っていきます。そしてそれが道路を被いつくし、まるで金と銀の絨毯のように見えます。その上を歩くのを楽しみにしているのは私だけでしょうか。それはまるで初雪の上ではしゃぐ子どものような気持ちです。

 来年もきっと今の季節咲き誇ることでしょう。もうこの木達の横にある椿は小さな蕾をつけています。あと1ヵ月もするとその蕾達が開き始め、綺麗な花を付け我々を楽しませてくれることでしょう。

 そう、自然は私達の知らない所で次の準備をしているのです。それはまるで生まれたばかりの赤ちゃんが泣くだけしか出来ないのに、ハイハイをし、つかまり立ち、ヨチヨチ歩きをするように少しずつ進化しているのと同じなのかもしれません。

 果たして古稀を迎える私には、そんな進化がまだあるのでしょうか?でもまだあると信じながら生きていきます。『進歩のない老人なんてつまらん!』そう信じているからです。