3歳になる男の子の孫はいたずら盛り。食べているものをわざと落としたり、オモチャを投げたり、お姉ちゃんと喧嘩して噛みついたり、至る所にいたずら書きをしたり、アニメ番組を途中で切ると大声を上げたり傍若無人である。

 どうしても言う事を聞かない時は奥の手がある。それは「鬼を連れてくるぞー」と脅かすことである。これは実に効果がある。それまでやりたい放題いたずらをしていた孫が、急に泣きべそ顔になり、「連れて来ちゃだめ!鬼ダメ!鬼ダメ!」と叫ぶ。それでもまだいたずらを続ける時は「じゃ、鬼さんの所に連れて行くぞ!」と更に脅かす。すると手足をバタバタして抵抗する。余程鬼が怖いようだ。

 秋田には“なまはげ”という鬼が居て『悪い子はいねぇかー』と声をかけながら各家庭を回る。すると小さい子どもは手足をバタバタして逃げようとして大声で泣き叫ぶ。それは全国的に有名な誰でも知っている風習である。

 確かに子ども達にとっては鬼というのは怖い存在なのだ。祭りで踊る獅子舞も同じような効果がある。これは脅かしというよりも、獅子舞が子どもの頭を噛むことによってその子の幸せを祈っているという日本全国でやられている風習だ。それでも子ども達は獅子舞が来ると泣き叫ぶ。何れにせよ子どもにとって鬼というのはやはり怖い存在らしい。

 うちにある鬼とは、古稀の時にお祝いに頂いた宮崎の高千穂で作られている数ヵ月かけた手作りのお面である。それはとても怖い面に作ってあり、無病息災を祈る縁起物として古の昔から作られたものである。それを飾ることにより家から災いを追い出し、健康に過ごせるようにされたものである。

 それは鬼ではないが、鬼みたいな顔付きで怖い顔をしているので、子どもにとっては怖い存在なのである。

 この面を頂いた時にはどこに飾ろうかと迷った。怖い顔なのでリビングなどに飾ると孫たちが怖がって遊びに来なくなるかもしれない。そこで家内が私の部屋の隅のちょっと見えないコーナーに置くことにした。

 私はお気に入りの品なのでそんな見えにくい所に置かれるのは不本意だったのだが、孫たちが怖がるというのなら仕方ないと渋々承諾したのだ。しかしこのちょっと隠れた場所にあることで、こんな使い方が出来るのだ。孫はこの面を見せることで大人しくなるし、私も頂いた面を自分だけ楽しめるという一石二鳥の使い方になったのである。

 いつになったらこの面を孫たちが恐ろしくならなくなるのだろうか。それは兎も角、暫くはこのお面は孫の躾道具として役に立ちそうである。