人間には“おふくろの味”というものが存在する。それは一生消えないものである。それと同じかどうかは分からないが、ハミガキ粉にもあるのではないかと思う。というのも私が今使用しているのは『White&White』というハミガキ粉だ。これは中原ひとみさんが11年間もTVCMで宣伝していたから御存知の方も多いことだろう。
学生時代からこれを使っている。新しいハミガキ粉が発売されると、その度に新商品を試してみるが、どうも自分には合わない。ここ30年位はずっとこれを使っている。
ところが色々な新製品に押されて必ずしも店に置いてある訳ではない。そこでそれを見つけたらまとめ買いをすることにしている。いっぺんに10個位買ってくるのである。それでも半年も持たない。そこで20個位買い求めたこともある。すると置く所がないので、洗面所の引き出しに入れておくと家内が「もう邪魔」と言い、半分位を秘密の場所にしまってしまう。だから引き出しのものが無くなりそうになると、又慌てて買い求める。その為に又そのハミガキ粉は行き場を失い、家内の機嫌が悪くなる。
歯を磨いた後、いつも洗面台にハミガキチューブの中身が垂れてしまう。その度に「あなた、ハミガキ粉の量が多過ぎるんじゃない?だからこんなに洗面台にチューブの中身が落ちるのよ。半分位にしたら?」とのたまう。そう言われれば言われる程何か少し腹が立ち、注意してハミガキするのだが垂れてしまう。
するとある日正しいハミガキの仕方という番組をTVでやっていた。それによるとハミガキ粉は小指の先位で充分だと言う。ちょうど今自分の量の半分位である。そんなことはないだろう。ブラシ一杯に付けないとハミガキ粉の意味がないだろうと立腹していた。すると後日やはり他局でハミガキの話をしていたが、同じような事を言う。まぁ試しにやってみようかとやってみた。すると見事に垂れない。確かに今まで付け過ぎていたのだ。考えてみれば普通の3倍位も付けていたのだ。だから垂れていたのである。直ぐに無くなるのにはそういう原因があったのだ。
さて、ハミガキチューブが無くなりそうになると、誰でも一生懸命絞りだそうとするだろう。私もそうだ。しかしいくらチューブを振っても完全に中味は出てこない。なのでキャップに近い方のチューブ部分をハサミで切る。そうすると3回分はまだ使える。だから切り取られたチューブは使いきるまで洗面所に置きっぱなしになっている。
一度家内がそれを捨ててしまい大喧嘩になったことがあるので、今では最後に捨てるのは私の仕事だ。たったハミガキ粉ぐらいで大袈裟なと思われるかもしれない。しかし歯ブラシの洗い方や置き方が気に食わないということで別れた夫婦は沢山いると聞いた。たかがハミガキ粉と思われるかもしれないが、そこにはまるで爆弾を扱うような細かい気配りが必要なのだ。