アルコール飲料を飲食店などで飲む時は、まず「とりあえずビール」と注文する人が多いことだろう。ビールで口を湿らせ次に焼酎、日本酒、ワインなどを楽しむというのが一般的な飲み方だ。魚には日本酒、肉には焼酎やワインというのが一般的な見方というのに異論はない。

 飲む所は色々あるが、一番先に頭に浮かぶのは居酒屋であろう。それもサラリーマンが社長の悪口を言いながら飲むというのが定番だ。

 ある調査によると、1ヵ月にサラリーマンの飲み会の回数は、20年前が月に6回だったのが、今や月に2回位に減っているという。その理由は若い人が飲まなくなったこと。連れて行って飲まされるのが嫌なこと。家に早く帰ってゲームやTVを観たい。飲むお金がないなどが理由である。私が若い頃は先輩がおごってくれたので、何軒かハシゴというのは当たり前だった。お調子者の私は1晩で20軒も連れて行ってもらったことがある。

 アルコール飲料にも色々な流れがある。30年前はビールが一番飲まれていて、アルコールの販売量の7割を占めていた。今はそれが3割になっている。ビールの変遷を辿ると一昔前までは圧倒的にキリンが断トツ一番だった。ところが1987年『アサヒスーパードライ』が販売されるとそのキレ味の良さに驚き、一気にキリンを抜き去り、今でもトップの座を守っている。1994年にはビールに替わり低価格の発泡酒の“ホップ缶”が発売され、2004年には発泡酒より安価な“第3のビール”を買って飲まれる方も多いのではないだろうか。何故ならビールの値段の半額位なので、多少ビールより味は落ちても値段には勝てない。半ダース買っても700円でお釣りが来るのは魅力である。

 私はビールが新発売されると、直ぐ購入して味見をする。今まで何十本ものビールを味見してきたが、気に入っているのは『麦とホップ』と『インドの青鬼』という缶ビールである。

 『麦とホップ』はサッポロビールが製造している第3のビール。その値段は何と350ml1本が110円位である。目を瞑って飲むとエビスビールに負けないと思う。だからいつも6本入りを買って冷蔵庫に入れてある。

 一方『インドの青鬼』はヤッホーブルーイングが製造しているちょっと濃い味のするビールである。これを飲むと他の缶ビールは飲めない。1本260円位で少し高いが、それだけの価値はある。

 最近は実に色々な地ビールが販売されている。高いものは1000円近くするものもある。ビールは300円までと決めている私にとっては、中々手が届かない値段である。しかしいつか飲んでみたいと思っている。

 30年位前に日本酒ブームが起こり、『越乃寒梅』などはプレミアが付き、一升瓶が2万円もの高値で取引されていた。しかしメーカーにちょっと驕りがあったのか、それから暫くするとブームも去っていた。次に来たのがボジョレーヌーボーである。毎年11月の第3木曜日に、“先進国の中で一番に解禁される”とTVで報道されると大量にボジョレーヌーボーが輸入され、色々な所で派手なイベントが行われた。これも暫くすると冷めていき、TVでも報道されなくなり、いつしか解禁日が分からず、気が付くと店頭にボジョレーヌーボーが淋しく並んでいるという風になっている。日本人の「熱くなりやすく冷めやすい」という国民性がそこに現れている。

 私はワインを年間200本位取り寄せる。それも全てボルドー赤ワインである。その中でもこだわりはコルク栓であること、底の凹んでいる部分が2cm以上あることと決めている。

 「随分お飲みになるようですが、体の方は大丈夫ですか?」と店の人に尋ねられるが、実はこれは患者さん用なのである。赤ちゃんが産まれたらその赤ちゃんの写真をラベルに貼り、スペシャルワインとしてプレゼントしているのだ。その数1万本以上になる。

 そんな赤ちゃんの写真が貼ってあるのだからと大切にとってある人が多い。しかし飲兵衛の中にはボルドーワインなのでどうしても我慢しきれずに飲んでしまう人もいるようだ。

 先日あるレストランでランチを食べていたら、その棚にその空ボトルが飾ってあった。そこのママに「どうしてここにうちのボトルがあるの?」と尋ねてみたら、15年位前に当院でお産をした人だった。どうしてもワインが好きなので我慢出来なかったらしい。そこにずっと置いてあるボトルを見ながらのランチは中々美味であった。又、行きたいと思う。