最近『イケメン』ならぬ『イクメン』パパが増えてきているようである。
イケメンは御存知の通り『イケてるメンズ』。つまりカッコよくて、ハンサムな男性の事である。
それに引っ掛け、育児を積極的に手伝う男性を育児の『育』を取って『イクメン』と呼ぶのである。
最近の新婚男性はすごいと思う。亭主関白ではなく、奥様への気遣いがすごいのである。
食事の時、食器を並べる。後片付けも手伝う。買い物は夫婦で出掛ける。
至れり尽くせりの御主人なのである。
奥様の妊娠が分かった時には、並大抵の気持ちではない。産婦人科には夫婦で来院。
超音波の画像を見て一喜一憂する。買い物に行けば、率先して荷物を持ち、つわりのきつい時は、
スポーツドリンク剤などを大量に買い求め飲ませてあげる。
行政もそれを後押ししている。例えば市町村で行っている両親学級。
人形を使っての沐浴、おむつ交換、抱っこの仕方など、本当に手取り足取り教える。
実際、我が子が生まれたらすぐ役立つようにだ。
分娩の時には、当たり前のように分娩に立ち会う。私が産婦人科医になった30年以上前は、
せいぜい御主人は分娩室の外の待合の廊下でウロウロしながら待ったものである。
「オギャー」と産声が聞こえても、すぐには赤ちゃんに面会させてもらえない。沐浴を済ませ、
綺麗な産着を着せられ、ようやく待合室に連れてこられ対面するのだ。
それが今や7割以上の御主人が立ち会うようになっているのだから、時代も変わったものだ。
ちなみに25年前位から当院では『立ち会い分娩』を推奨し行っているのだが、
当時特におじいちゃんから「分娩室に男が入るなんて、とんでもない」という電話がよくかかってきた。
分娩に立ち会うと、御主人も奥様の命を懸けたドラマを見せられ涙をボロボロと流される。
そしてその時「よし、どんな事があってもこの子を守るぞ」というパパスイッチが入るのだ。
立ち会い分娩されたパパの方が確かに育児に積極的だ。それは分娩の際、
自分は何も出来なかったという後悔の念と、その分頑張ろうという気になるからである。
とは言っても、実際どう赤ちゃんに接していいのか分からない。
赤ちゃんを抱っこさせても恐る恐るで、今にも赤ちゃんを落としてしまうのではないかとハラハラする。
一方、パパ、ママだけでは心配なので、おじいちゃんやおばあちゃんにも面倒をみて欲しいという人も多い。
「孫というのは、こんなにも可愛いものなのか」と誰もが孫を授かった時思うのだ。
我が子の時にはあまり積極的にやらなかったおじいちゃんも、積極的に育児に参加してくれる。
最近そんなお父さんやおじいちゃんに対して、いろんな称号が与えられているという。
赤ちゃんの扱い方が上手いパパは『パティシエ』ならぬ『パパシエ』。
オムツを手早く取り替えられるようになると『ソムリエ』ならぬ『オムリエ』の称号が与えられる。
おじいちゃんも孫をうまく取り扱えたら、祖父をもじって『ソフリエ』。
こんな風に育児が片肘を張らなくても周りの人達が協力してくれる。
これが本当の男女共同参画の社会と言えるのかもしれない。
但し、そうは言っても、男には「産む事、おっぱいを飲ませる事」は逆立ちしても出来ないのだが…。
頑張れ『イクメンパパ』。ソフリエがついているぞ!!