陣痛が起こりやすい時間帯は何時頃か知っていますか。それは夜間が圧倒的に多いのです。何故?人間の心理としては、暗い所にいると何か不安になるからです。まして臨月を迎えた妊婦は、いつ産まれるのだろう?上手く産めるのだろうか?元気な赤ちゃんだろうか?と不安なことばかり考えます。そういう状況の時、暗い所に身を置くと緊張し、お腹が張り、陣痛が起こるのです。

 江戸時代、夜の灯といえば行燈か松明の火でした。エジソンが初めて電球を発明したのが1879年ですから、人間が夜も昼も同じように明るい光源を手にするようになってまだ100年ちょっと位しか経っていません。

 先日戦後の一家団欒の様子を再現していました。今と比べると本当に暗くて、家族の顔がようやく分かる位の明るさしかありません。新聞を読むのもやっとの明るさです。

 日本の照明電気エネルギーは30年前に比べると約30倍以上になり、あと、5年もすると、今の5割増しになると予測されています。ところが、日本のビルの場合、仕事場の照明全体を占める蛍光灯の割合は8割にもなります。一方米国では半分位が白熱電球を使っているそうです。日本では仕事中は常に青白色の人工の光の中に身を委ね、パソコンの画面に向かってコンピュターを操作するのです。これではストレスが溜まらない方が不思議です。仕事が終わり最寄の駅に向かっても、その途中無味乾燥な蛍光灯が道を照らしています。だから赤ちょうちんを見ると何となくほっとして入ってみたくなるのが人情というものでしょう。

 最近「季節うつ病」という病気が注目されています。秋から冬にかけて起こる病気で、若い女性に多く、不安感、朝起きられない、学校や会社に行くのが億劫になると行った症状があります。不思議なことに春から秋にかけては起こりません。

 治療法は毎朝、室内灯の5~10倍の約3千ルクスもの光を2時間ほど浴び、1分間に数秒は光源を見つめるというものです。この方法は夜眠ろうと思っても夜更かしをしてしまう人や、生活が不規則で睡眠時間がなかなか一定しない人にも応用されています。

 逆にライトアップされた史跡や橋、並木道、車の渋滞による光害も各地で起こっています。例えば、アオウミガメの産卵は夜間ですが、砂浜を傍客無人に走り回る4WDのライトや遊歩道の街灯がアウミガメの方向感覚を麻痺させます。

 渡り鳥も体内にあるオートジャイロ機構が光によって妨害されるため、越冬する場所を変えざるを得なくなっています。茨城県の江戸崎町はオオヒシクイの越冬地でしたが、近くの公園がライトアップされたと同時に一羽も居なくなってしまいました。植物では菊の栽培などに光が応用されていますが、虎の門のプラタナスの街路樹も街灯側だけはライトが当たり落葉しないので、その灯りの下の歩道は恋人のデートコースとして人気があります。

 毎年、年末になると日本で一番きれいな星空が見える町ベスト10が発表になります。湯布院のグループは町内の闇の深さを5段階に分けるという環境調査に取り組んだ結果、闇が生み出した民話や言い伝えが如何に多いかを知ったそうです。昔から闇というものは恐れられ、人は近寄らない所でした。それは今でも変わらないでしょう。しかし逆に夜間どこでも明るいので、闇というのに惹かれるのかもしれません。それは人間の灯りが無かった時代に戻りたいという人間の隠れた心理がある為なのかもしれません。