妊娠すると必ず行う項目の中に血液型がある。というのも、分娩時出血が多い時に輸血が必要なのでその為である。分娩時出血は普通500ml以下なのであるが、何千mlにもなることがある。その時は至急輸血をしないと母体の命が危ない。だから血液型を必ず調べるのである。
一方、赤ちゃんも生まれたら、5日目に足の裏から極少量の血液を採り、血液型を調べる。その理由は、親が血液型を知りたいのが一つの理由である。だが、その他に、退院した後に万が一子どもの血液型が親と会わないということになると、入院中に赤ちゃん取り違えかも知れないと言われるのを防ぐ為である。だから入院した際、御主人の血液型も聞く。だが、わざわざ採血して調べることまではしない。自己申告である。
産後5日目の回診の時に、赤ちゃんの血液型が何型かをお母さんに当ててもらう。ご主人の血液型と自分の血液型を組み合わせれば、何通りかを考えられる。
O型同士であれば、O型の赤ちゃんしか生まれない。A型とB型の組み合わせであればA、B、AB、O型の4つとも生まれても不思議ではない。
先日、産後5日目、あるお母さんに尋ねた。
「今朝、赤ちゃんの血液型を調べたのですけど、何型だと思います?」
「私がA型で、主人もA型だからA型かO型かしらね」
そう言われてびっくり、カルテには赤ちゃんの血液型はB型と書いてあったのである。目玉が飛び出そうになるのを必死で抑えながら、慌ててもう一度、お母さんの目の前で赤ちゃんの血液型を調べてみた。しかし間違いなくB型である。
「ほら、目の前で調べてみたけどB型でしょう。間違いないよね」確かに赤ちゃんの足に付けられたネームバンドには、そのお母さんの名前が書いてある。出産直後にネームを付けるので、取り違えなど考えられない。お母さんも「この子は私の子に間違いない」と太鼓判を押す。
そこで御主人の血液型を調べなくてはならないと思い、会社に電話を入れたら、飛んで来られた。「俺の子じゃなかったら承知しねぇぞ」というような恐い顔でじっと奥さんを睨み付けている。
御主人から採血して目の前で判定した。すると御主人の血液型はB型だった。本人は生まれてからずっとA型だと思い込んでいたという。御主人自身の勘違いだったのだ。ご主人の顔がいつもの柔和な顔になり、そして穴があったら入りたいというような恥ずかしさの表情になった。
我々スタッフも良かったと胸をなで撫で下ろした。
全てハッピーエンドだ。
~日本人の血液型の発生率~
O×O O 100%
O×A O 40% A 60%
O×B O 43% B 57%
O×AB A 50% B 50%
A×A O 16% A 84%
A×B O 17% A 26% B 23% AB 34%
A×AB A 50% B 20% AB 30%
B×B O 18% B 82%
B×AB A 22% B 50% AB 28%
AB×AB A 25% B 25% AB 50%
さてあなたは両親の血液型を知っていますか?