自転車というものに初めて乗ったのは、幼稚園の時だった。当時は子供用の自転車などはなかった。だから無謀にも大人用の自転車でチャレンジしていた。大人の自転車はがっしりしていて頑丈に作ってあった。というのも荷台に100kg以上の荷物を乗せる事も珍しくなかったからである。とにかく『ごつい』というイメージがあった。

 まだ小さいので、当然足が地面に着かない。そこで踏み台を作ってもらい、そこから乗る。その後大人に後ろから押してもらい、そこからスタートするのだ。Uターンして又その踏み台まで戻ってくれば良いのだが、そう思い通り訳には中々いかず、降りる時はそのまま地面に倒れ込む。お陰で生傷がたえなかった。小学校の上級生になると1人で乗れるようになり、行動範囲も広がっていった。

 友人と魚釣りに行ったり、川のボートに乗ったり、塾に行く時も当然使っていた。時には運動場で競争し、先生から怒られ立たされたりした事もあった。自転車はまさに必需品だった。

 40年前宮崎に帰って来た際、近くに自転車屋があり、そこで自転車を購入した。それは新車ではなく要らなくなった自転車の部品を寄せ集めていたので、格好は今一だったがよく走った。故障するとすぐに修理してくれた。だから当時街の自転車屋さんというのは至る所にあった。

 開業して遠くへは行けないので自転車を買った。今度は新品である。1つはマウンテンバイク。タイヤの巾が1cm位あり、10段切り替えが付いている。もう1台はレーシング用自転車。これはタイヤの巾が3cm位しかなく、フラフラして危なかった。しかし仕事があまりにも忙しすぎて、2台ともあまり乗らずに廃車にした。

 最近では自転車ブームだそうだ。私の知っている人には何人ものマニアがいて、聞けば1台100万円ものもあるらしい。部品1つ交換するだけでも5万円単位かかるというから、経費もバカにならない。しかしそれ以上に自転車に乗るという楽しみがあると言う。そういう話を本当に嬉しそうに語るのをみると、やはりよほど自転車に乗るのが楽しいのだろう。

 話によると4~50kmもスピードが出るらしい。マンホール上などの金属の部分は滑り易く間違って転倒すると大怪我をしないとも限らないという。盗まれるかもしれないので自転車置き場ではなく、家の中にしまっておくと言うからまるで恋人並だ。いや、恋人以上かもしれない。1日100~200はザラに走るというから凄い。

 私も今の趣味に全部飽きたら、自転車にのめり込もうと思う。しかし今凝っている趣味があまりにも多すぎて、それはしばらく先の事になりそうだ。

 ちなみに今は電動自転車を買い求め、毎日1時間大淀川の堤防をゴミ拾いしながら楽しんでいる。電動自転車というのは自転車の仲間には入らないという人もいる。電気アシストがあるから楽だ。一度これに乗ってしまうと普通の自転車には戻れない。いずれにせよ風を切りながらペダルを漕ぐというのは気持ち良い。