小学生だった娘が犬を飼いたいというので、フェニックス自然動物園で開催していた。「里親探し」というイベントに参加した。平成14年8月の話だ。
犬が生まれたけれど育てられない人達がそこへ子犬を連れてくるのである。行ってみると段ボール箱の中に子犬が1匹ずつ入っていて、気に入った犬の所へ行き、それを譲り受けることが出来る。何人も希望者がいるとジャンケンで決める。娘が気に入った子犬は人気があり、何人か並んでいた。箱の中を覗くと、茶色と白のブチの可愛らしい子犬が入っていた。本当に可愛い子犬なので人気があるのは当然だ。そこでジャンケンで決めることになった。何人もいたので負けるだろうと思っていたらジャンケンに勝ち、その犬を貰えることになった。
それを手渡された時参加者に次のような指導があった。
まず一つ目。名前を付けて下さいね。皆さんも皆名前がありますよね。名前を呼ばれて「はーい」と返事するでしょ。犬は話せないけどその代わり尻尾を大きく振ってくれます。やはり自分の名前を呼ばれると嬉しいんですね。
二つ目。必ず保健所に登録をして下さい。皆さんも自分が住んでいる家があるでしょう。犬は家族の一員ですから、皆さんの住んでいる所がその場所です。又必ず予防接種を受けてね。
三つ目。散歩をする時には必ずリードという紐で繋いでから散歩して下さいね。リードを付けないで散歩をしていると、居なくなったり他の犬と喧嘩になったりします。又他人に噛みつくこともあるので必ずリードを付けてね。
四つ目。可愛いからといって可愛がるばかりじゃだめです。悪いことをした時は叱ることも必要です。
五つ目。これはお父さんお母さんにですが、犬は10年以上長生きします。今は自分の子どもさんが小さい訳ですが、10年もすると中学生になり、犬の世話を充分することが出来なくなります。つまり将来は子どもさんよりお父さんお母さんが面倒をみなくてはいけません。そういう覚悟も必要です。
六つ目。散歩をさせる時は必ずフンの後始末をして下さいね。フンを踏むと誰もがフンガイしますから是非ともお願いします。
七つ目。これが一番大事なことなのですが、犬も年老います。目が見えなくなったり、歩くのもヨロヨロしてきたりします。そうなることを覚悟して飼ってください。最後まできちんと世話をしてあげることが大切です。以上を守って譲渡された犬を連れて帰って下さい。分かりましたか?分かったら手を挙げて下さい。元気よく全員から手が挙がった。そしてロキは晴れて我が家の家族の一員となったのだ。
まだ生まれたて2、3ヵ月の子犬なので、娘の掌にも乗る位の大きさだ。いたずら好きで色々な隙間に入り込む。一度はガラス戸と網戸の間に入り込み、身動きがとれなくてキャンキャンと鳴いていたこともあった。
少し大きくなると私が自転車で堤防まで一緒に連れていき遊んだ。凄く元気がよくて自転車で競争すると25kmものスピードで走ることが出来る。マラソンランナーより早いのだ。
そのロキも数年前から少しずつ老化現象が見られるようになった。犬は人間の5倍のスピードで年を取るというので、2,3年前位までは同級生という関係だった。
「お互い長生きしよう」と声をかけながら散歩をしていたが、1年前からロキは白内障が酷くなり、2,3ヵ月前からは歩くものヨロヨロしている。まだ食欲はあるが食べる量も減ってきた。そして歯が弱ってきて普通の餌は食べられなくなってきた。
そこで何か良いものはないかと探していると、あった!それはまるで人間用に作ってあるようなネーミングである。早速ロキにそれを上げると嬉しそうに食べる。只食べる量はほんの僅かだ。
現在ロキは18歳、私70歳である。犬が人の5倍早く年老いるとすると、ロキは90歳ということになる。いつの間にか私の年齢を超え大先輩になっていたのである。老人が老犬の世話を、いや老犬が老人の世話をしている。いわゆる老々介護である。
いずれにせよお互い年寄りであることに違いない。お互いお大事に!