もう40年以上も前の話だが、友人に連れられて、近くのレストランに入った。席に着くと友人がある料理を頼んだ。出てきた料理は真っ白な皿に、まるでトマトスライスのように薄く切ってあり、鮮やかな緑色をしている。それをワサビ醤油につけて食べるのだという。

 どんな味がするのだろうとワクワクしながら口に入れた。触感はバターみたいだが、ちょっとクセがあり生臭い。あまり美味しいものではないと思いながら2切れ目を食べた。すると最初とは又違う味がする。今度は美味しい。友人が「トロみたいな味がするだろう?」と言う。そう言われてみればそんな感じもしないではない。

 今まで食べた事のない触感と味である。まぁ、わざわざオーダーして食べる物でもないと思いつつ店を出た。それが私とアボカドとの最初の出会いである。それから何回か色々な店で食べたが、段々美味しく感じるようになり、今や大好物である。

 店で売っているアボカドはほとんどメキシコ産である。1個100~150円位で売っているが、買う時はコツが要る。まず持ってみる。すると硬い物と少し軟らかい物がある。使う時期によってそれを選ぶのである。その日に食べたいのであれば、一番軟らかそうな物を選ぶ。2、3日後に食べたいのなら、硬い感じの物を選ぶことにしている。

 アボカドは糖分がわずか1%しかないが、脂肪分は20%も含んでいる。それが故に『森のバター』と呼ばれている。しかしこの脂肪分はオレイン酸という不飽和脂肪酸で、血中コレステロールが増える心配もない。又、ビタミンEを多く含んでいるので、体に優しい果物である。

 さて、アボカドは真中にピンポン玉位の硬い種がある。包丁でスイカみたいに真っ二つにしようと思っても絶対に出来ない。そこで縦に包丁を入れ、回しながら真っ二つにする。その後、種は包丁の手元の方でグサッと刺し取り除く。普通こういうふうな包丁の使い方はしないので、料理教室で習った時はビックリした。

 半分に切ったアボカドを更に半分に切り、手で皮を剥く。これで一応出来上がりである。普通はこれをスライスしたり、乱切りにしてサラダに入れたりする。又、ボールの中でアボカドを細かく潰し、それを滑らかになるまで混ぜ、それに塩とレモンを入れるとワカモーレというソースが出来る。メキシコを代表するソースである。それをクラッカーやチップスに乗せて食べるとちょっとしたおつまみになる。

 私の一番の得意料理はアボカド入り生春巻きである。ペーパーライスを湿らせ、そこにサニーレタス、ボイルしたエビ、アボカド、キュウリを挟み、きつく巻いていくだけで出来上がり。とても簡単な料理である。生春巻きを、今まで居酒屋やレストランで何回も食べた事があるが、こんなにお手軽な料理とは知らなかった。

 うちの家内もアボカドが大好きで、誕生日には必ずドラゴンボールを近くの寿司屋に注文する。それは巻き寿司の中にアボカドが入っていて、まさに日本と米国の寿司のコラボレーションである。

 因みに今までずっと“アボガド”と思っていたが、正確には“アボカド”だそうだ。40年前からずっと食べ続けているのに最近初めて知った。アボカド通を自負している私にとって、ちょっと恥ずかしい。