仕事柄遠くへ行けない私のストレス解消法。それは買物である。買い物といってもデパートや色々なショップではなくスーパーマーケット。最低週2回は行く。だからどこに何が売っていて何が旬だということ以外にも、値引きする時間なども頭に入っている。雨の日は、いつもより1時間以上早く値引きシールが貼られる。だからのんびり出かけていると既に全部売り切れていることもある。さて誰と行くのか?それは私1人である。
買い物をしているとよくカップルとすれ違う。聞き耳を立てているとだいたいこんな会話である。「ねぇ!今夜何にしようか?」「そうだね、今日は久しぶりに鍋が食べたいから、鍋料理の材料を買おうか」。
友人ともよくすれ違う。向こうは大抵夫婦仲睦まじくゆっくりとカートを押しながらすれ違う。「あら、二郎ちゃん1人なの?」と必ず尋ねてくるので「僕独り者なの!」と冗談を言うと真顔で「それは大変ね。料理って男の人にとっては面倒くさいから出来合いの物を買うんでしょ。そうそう、入口の所にあったお弁当たった420円で売っていたわよ。ボリュームもあってリーズナブルだわ。それオススメ!」。なんて言葉が返ってくる。
まあ家の中では家内にも相手にされず、本当に独り者のような生活をしているので、それにしても良いのだが、幸に今まで弁当は買ったことがない。
家内から買い物を頼まれることもある。先日は孫がバナナが好きなので「バナナを買ってきて」と頼まれた。ちょうど買物に行く時だったので、ナイスタイミングといそいそと出かけ、バナナを買い求めた。「ほら、買ってきたよ」と机の上に置くと目を円くして、「あなた、バナナ2房も買ってきたの?1房で充分だったのに…」「だって1房128円で安かったから、2房買ってきたんだよー」と口を尖らせて弁明した。
ある日は「リンゴが食べたいので、リンゴもついでに買ってきてね」。そんなのお安い御用と出かけた。フジが山積みになっているが、ちょっと小粒だった。その横にピカピカに磨かれたリンゴがある。フジは98円だったがそれは198円もする。少し高いがとても美味しそうだ。それで家内の喜ぶ顔を想像しながらそれを買い求めた。
家に帰り「ほら、大きくてとても美味しそうなリンゴだったから買ってきたよ」と得意気に手渡すと「私ね、リンゴはフジが良いの。こんなスターキングなんて美味しくないから嫌い」とのたまった。もし、ちゃぶ台があれば「何だとコノヤロー!」なんてちゃぶ台をひっくり返すのだろうが、残念ながら家にはないのでそれも出来なかった。家内は秋田出身。実家はリンゴ園。リンゴだけは口うるさいのだ。それでそっとそこから離れた。
これからは頼まれても絶対買ってこないと腹を括った。『欲しいものは自分で買いに行ってください』。プンプン!