今まで目で苦労したことはない。どんなに小さい文字でも裸眼で見える。新聞の株式などの小さな文字もよく見える。(株式は全く興味ないのだが…)

 同級生の中には早い人で40代に入った頃から老眼鏡をかけないと見えない人がいて、50代になると殆どの同級生がかけている。60を過ぎると周りで老眼鏡を掛けていない人など皆無である。

 そこでいつも同級生などにわざと小さな字を見せ「この文字見える?」と意地悪な質問をしていた。すると相手は「全く見えない」と言い、「よく君はこんな文字読めるなー」と感心される。友人は老眼鏡をかけ「なるほどそう書いてあるのか!」と驚く。その後その老眼鏡を恥ずかしそうにすぐ外しケースにしまう。そして友人はそんな自慢するような人とは話もしたくないという態度に出るのである。だから最近はあまり視力の話題は同級生ではタブーにしなくてはと反省している。

 話は変わるが、40年位前アフリカを旅したことがある。その時に原住民のマサイ族の人と視力の競争をした。当時私の視力は両目とも2.0。視力には自信があった。そこで大草原の向こうに何が見えるかを競争した。私には何も見えないが、マサイ族の人にはキリンが見えるという。「うそ!」と思い双眼鏡を覗くと、確かに米粒位のキリンが見える。

 話によればマサイ族の視力は6.0もある人が珍しくないという。そんな人と視力を競い合うのは、100mをボルトと競争するようなものだ。一般的に視力検査はC型の隙間のある所が左右、上下どこにあるかで測る。毎年人間ドックで最初に右目、その後左目を測るのであるが、少しずつやはり視力は落ちている。因みに今年の1月は右は1.2、左も1.2であった。

 ところが最近急に視力が落ちてきた。最初は寝不足か、それとも目の使い過ぎかと思っていた。しかしどうやらそうでもない。虫眼鏡で見ると実にくっきり文字が見える。つまり老眼になってきているのだ。年齢も70近くなので、それは当たり前のことなのだが、何かそれを受け入れられない自分がいる。その後どんどん視力は落ちていくばかりで、カルテの文字も見辛くなった。

 そういう時にハズキルーペのCMを見た。渡辺謙と菊川怜の息の合ったコンビであっという間に売れた。1つ1万円以上するのにも関わらずである。ある店でそれを試せるコーナーがあったので、かけてみると実によく見える。さすが売れるだけのことはある。欲しくなった。しかし1万円もするので二の足を踏んでいた。

 先日100円ショップに行ってみると、沢山の老眼鏡が置いてある。+1から+3までの度数がある。試しに1.5のものをかけてみた。そうするとよく見える。悔しい程見えるのである。そこでそれを早速10個買い求めた。10個買っても1000円。100個買っても1万円。ハズキルーペの100分の1の金額である。それを家やクリニックの至る所に置くことにした。何故なら老眼鏡をいちいち持ち歩く必要がないからだ。

 そのメガネをよく見るとアズキ色である。そこでこれをかける時「これアズキルーペだよ」というと、殆どの人が「それがあのハズキルーペですか」と繁々と見入るそこで「いやこれはハズキルーペじゃなくてアズキルーペ。柄の所がベッコウみたいな色でアズキ色をしているでしょう。だからハズキルーペじゃなくてアズキルーペ。実はこれ100円ショップで買ったの。だから百個買ってようやくハズキルーペの1個分。安くて良いでしょう?」と自慢しまくった。

 だが本当は眼科を受診し、視力を測ってメガネ処方をしてもらわないといけないのだが、暫くはアズキルーペで我慢しよう。何故なら1日の生活の中で老眼鏡を使う機会があまりないのだから…。