数年前の夏、東京から友人が遊びに来た。東京の人にとって、宮崎の夏の暑さは特別らしく、まるで太陽の光が針で肌を刺す様な感じがするという。飛行場に降りて車に乗ると、すぐ冷たいものが食べたいという。そこで「白熊食べに行こうか?」と言った。すると友人は目を丸くして「えっ?宮崎の人は白熊を食べるの?僕、食べた事ないけど、どんな味がするの?今までカンガルー、ワニ、カエル、ヘビ、クマ、カメとか食べた事あるけど白熊は初めてだなぁ。淡白な味なのかな?それとも地鶏みたいにジューシーな味がするんだろうか、楽しみだなぁ」と言う。
早速レストランに入り白熊を注文した。すると友人は「何これ、かき氷じゃないの!フルーツの入った・・・。白熊ってこれなの?てっきり白熊の肉が出てくると思ったのに・・・」。
そうか、考えてみたら東京は白熊を食べられる所はない。だから白熊と言ったら、北極の氷の上にいる白熊を想像するのも無理はない。2人で大笑いしながら白熊を食べた。
学生の時、お正月に友人4人と鹿児島に行ったことがある。すると天文館に白熊の発祥の店があるというので、そこへ行ってみようということになった。外は寒く小雪がちらつくような天気だ。店に入り「こんな寒い時でも白熊あるんですか?」と尋ねてみると、冬でも白熊は作っているという。そこで4人分注文した。出てきたのは宮崎で食べる白熊の倍もあるような大きさである。まずその大きさにビックリ。でも食べてみることにした。
友人3人は半分位食べたところで「もういいよ。体が冷えてきて寒い・・・。しかも頭がキンキンしてきた」と言う。みんなかき氷を食べると頭がキンキンすると言うが、私は一度もそんな経験はない。そこで友人3人分の残りも食べた。そこでついたあだ名が『白熊男』。ギャル曽根ではないが、生来胃袋は丈夫に出来ているので、冬でも白熊位では胃は何ともないのだ。今でもその友人達と集まると、必ずこの時の白熊の話が出る。
8月友人からデパートの食券をプレゼントされた。それはデパートの地下のパフェコーナーで白熊が食べられるというものだ。行こう行こうと思っていたが、8月はなかなか忙しくて行けなかった。9月になっても忙しさは続き、行けそうにない。そこでとりあえず白熊はいつまでやっているのか電話で尋ねてみた。すると9月一杯までやっているという。そこでようやく先日家内と子供達でその店に行ってみた。
椅子に座り、白熊を注文すると目の前で作ってくれる。まずかき氷をお皿にしきつめ、その上にあずきをのせる。その上にかき氷をのせ、チューブに入ったコンデンスミルクをたっぷりとかける。それからグレープフルーツ、キィウイ、オレンジ、メロンをスライスにしてかき氷に刺し込み出来上がりだ。
最近白熊を食べる機会がなかった。何年ぶりだろう?と目の前に出てきた白熊を眺めながら食べ始めた。家内はしばらくして「もう頭がキンキンして食べられないわ」とギブアップしたのでそれをもらう事にした。残りをあっという間にたいらげると家内は驚いた様子で「あなた、よく食べられるわね。そんな冷たいのを食べて大丈夫?」そのセリフはまさに学生時代に友人から聞いた言葉と全く同じだった。
友人の粋なはからいで、久しぶりに白熊を食べることが出来た。友人に感謝、感謝である。又食べに行きたい。