重要な会議があるということで招集された。
行ってみると、いつもの20人も入ると一杯の会議室ではなく、200人は入るかと思われる様なホール。
気にも留めず中に入り、会議は始まった。
 ところが部屋がやたらに寒い。30分もすると足元が冷えてきて、どうしようもなくなり、
貧乏ゆすりをしたり、足踏みをしたりして何とか暖を取っていた。
1時間もするとしびれる位の寒さ、まぁいつもだと1時間15分位で終わるので我慢しようと頑張った。
 ところが年度末という事で、いつもよりかなり議題が多く2時間かかってようやくお開きとなった。
車に乗り暖房を全開にして帰ったが、体の震えは止まらない。
とりあえず体を温める為に風呂に入った。これでようやく体が温まり一安心。
 朝起きて何となく体がだるいがたいしたことはないと思い、夜、歓迎会に出席し、
2次会にも行かずそのまま帰った。次の日も学会発表があり出席。
その後、懇親会がありそれも出席した。日曜日、朝起きたら声が出ない。かすれ声なのである。
 日曜日だからまあ一日のんびりと過ごせばそのうちによくなるだろう。と高を括っていた。
ところが日曜日たっぷり休養を取ったのにやはり体がだるい。仕事だけは何とか済ませ横になった。
次の日も、次の日も同じ。体がだるい上に喉が腫れていてお粥以外食べられない。
そこで耳鼻科を受診した。
 内視鏡を鼻の奥から入れ診てもらった。
鼻毛の中を滑るように鼻の中を進んで行く。麻酔が効いているので痛みや不快感はない。
それにしても何か喉の内面が映し出されるというのはあまり気持ちの良いものではない。
「あーと言って下さい」と言われたので「あー」というと何か開くのが見えた。そこが声帯だという。
そうか、これがカラオケの際に役に立っているんだな。つい、何か1曲歌いたくなった。
「いー」と言うとその形が変わる。中々人間の体というのはうまく出来ているものだと感心しながら見ていた。
 「やはり、少し喉の奥に炎症があります。この白い所がそうですね。
鼻からの鼻汁が喉の方に流れ、口の中に溢れて来ます。左側の方にはポリープもありますね。
まぁそれ以外には異常はなさそうです。薬を出しますので、それで様子を見て下さい」。
礼を言い、お金を支払い処方箋をもらい、近くの薬局で処方してもらった。
 薬はうがい薬以外に5種類出ていた。痛み止めは痛い時に飲めばいいのであるが、
それ以外は定期的に服用するようになっている。
 まず抗生剤、これは朝1日1錠。アレルギー性鼻炎の薬、これは朝・夕2回2錠ずつ。
痰を切れやすくする薬、これは朝・昼・夕食後2錠ずつ。それと寝る前に飲む抗アレルギー剤を1錠。
と書いてある。それを見て頭の中が混乱しそうになる。
1日3回ずつ飲む薬ばかりとかであればそうでもないのかもしれないが、
これだけ時間差があると、それを理解するだけでも大変だ。
 私の母も、70過ぎた頃から色んな薬が処方され、その数は10種類以上あったと思う。
それはすべて大きな煎餅缶に入れてあった。しかし見ているとほとんどそれは服用されず、
毎週病院から貰ってきた大きな薬袋に入れられた袋は、そのまま缶に押し込んであった。
 「お母さん何故薬ちゃんと飲まないの?先生の言う通りに飲まないとだめじゃない!」
と言うと母は少しバツの悪そうな顔をして「だって二郎、この袋の薬飲むだけでお腹一杯になるんだもん。
人間先ず美味しい物を食べるのが最優先でしょ。薬はその後飲めそうだったら飲めばいいのよ」。
確かにそうだ。もうそれ以上言うのも可哀想だと思いそのままにしておいた。
 当時は今よりも沢山の薬を処方していた時代だった。
医療費は無料だったし、貰えるものはどうせタダだから貰っとこうという時代だったのである。
その煎餅缶は3個もあり、いつも机の下に置いてあった。
 確かに薬をきちんと飲まなくてはいけないと思う。
しかし今回の様に時間がバラバラで、錠剤の数も異なれば、60歳そこそこの私でもパニックになる。
ましてや年配の方だったら大変なのではなかろうか。自分が病気になってようやく病人の気持ちが分かる。
 自分では優しい医療をしているつもりでも、決してそうなってないことも多いに違いない。
いつも患者サイドに立った医療に心を配っていきたい。