アリはいつも忙しそうに動き回っている。上から見ているとほとんど一日中動き回っていて、いつ休んでいるのだろうと不思議に思う。お菓子の残りを運んでいたり、死んだハエを数匹のアリが運んでいたり、道案内役のアリもいる。その動きには休憩というものとは縁がないような忙しさだ。
ある学者がアリの研究をしたそうだ。そこで分かったことはチョコマカ動き回るアリ達の実際は3割しか仕事をしていない。7割は忙しそうにウロウロと動き回っているにすぎない。一見働き者と思われるアリでも、実際かなりサボリ癖のあるアリがいるということになる。
それで7割のウロウロしているだけのアリを集めてみると、今度はそのうちの3割は真面目に仕事をするそうだが、相変わらず7割は仕事をせずにウロウロしているだけだそうだ。
一方、よく働いているアリの集団を集めてみると、今度は7割のアリがさぼり始め、実際働いているアリ達は3割しかならないそうだ。
つまり結論としてはアリの集団は常に3割はよく働き、7割はサボっているアリで構成されていることになる。
これを人間にも当てはめてみると、実に同じようなことに思い当たる。例えば中学、高校、大学では必ず英語が必修科目になっている。最低3年、最高10年も習っているのに、社会人になって英語を使えるのはせいぜい3割だ。7割は「ディスイズ ア ペン」の領域から一歩も出ることも出来ない。習った英語の3割も使える人はかなり英語が堪能な部類に入る。
数学で習うサイン、コサイン、ルート、微分、積分なども実際の社会に出て役に立つ人など3割もいない。歴史年表を必死で覚えた年号など実生活では意味を持たない。古典の源氏物語、漢文も実際の生活に役に立つとは到底思えない。しかし一通り習うことで頭のどこかにそういうものが存在するということが重要。3割もその中から引き出すことが出来るなら天才と呼ばれても不思議でない。
野球の試合も同じだ。いくら首位打者でも3割も打つのは至難の業だ。7割は三振、ゴロやフライでアウトになっている。地方の高校野球の予選では時々36-0などのゴールドゲームのスコアを見かけることがあるが、ヒットばかり続けば試合は終わらないし、見ていても全くつまらないだろう。3割のヒットがあるから野球は面白いのだ。
宝くじも同じ。当たるのは3割どころではなく、もっと低い確率だ。7割以上の宝くじが役に立たなくなるのは分かっていながら一攫千金を目指して宝くじを買う。買う前に無駄になる券のことを気にして買う人などは皆無だ。
こう考えてみると、人間はいかに無駄な生活をしているのだろうと言わざるをえない。もし7割を有効に使えばもっといい生活が送れるのにと思う。
しかし一見無駄に思えるような出来事も、自然界の中の行動に照らし合わせると、実に効率よく作用していることになる。逆にいうと無駄があるからこそ、進歩もあるのだ。だから結果として7割が無駄だと嘆くこともない、また恐れることもない。