家内が法事で実家に4、5日帰る事になった。実家は秋田。昔は帰るのに1日がかりだったのだが、秋田新幹線が出来、それよりずいぶん短い時間で到着する。それでもやはり1日がかりに近い。
さて問題は私のこと。自慢ではないが一人暮らししたことがない。炊事、洗濯、掃除、全て母や家内に任せきりで、今でいうイクメンではないのである。炊事に関しては毎日病院の給食を検食として食べているので問題はない。掃除も自分の部屋位は出来る。
しかし問題は洗濯だ。汗かきの私は今の時期、アンダーシャツ、Tシャツを1日5回位は着替える。汗をかいたら洗濯カゴにポンと入れておけば、綺麗好きな家内がすぐ洗濯機に放り込み、ベランダに干してくれ、その日のうちにそれを畳み、タンスに入れてくれる。いつもは何とも思わない1日の出来事なのであるが、それをしてくれないということになると、どうしたらいいのだろう。
何年か前、やはり家内が留守をした時は同居している娘が全てやってくれた。その時も万が一の為に、洗濯機の使い方を紙に書いてもらい洗濯機の前に貼ってあった。しかし幸いに娘が全部してくれたので、結局自分では何もしなくて済んだ。しかし今回は娘も一人暮らしを始め一緒にいないので自分だけが頼りだ。
とりあえずまず洗濯物を洗濯機の中に入れた。その後洗剤をカップの半分位入れ『洗い』のボタンを押した。すると水がチョロチョロと洗濯機の中に流れ始めた。何とか上手くいきそうだとほくそ笑んでいると、水が中々溜まってこない。もしかして排水溝から水が漏れているのかもしれないと思い、とりあえず『切』のボタンを押し、ひとまず後でしようと思った。
しばらくして同じように『洗い』のボタンを押すと、水がチョロチョロと出始めた。じっと見ていると少しずつではあるが溜まり始めた。これでOKだ。次に『すすぎ』のボタンを押した。当然グルグルと回り始めると思った。ところがウンともスンとも言わない。もしかしたらヒューズが飛んでいて動かないのかな…と思って周りを見回すが特に何もなさそうだ。そこで諦めた。
数日後家内が帰ってきた。洗濯機を覗くと「あら~、洗濯物が入ったままになっているわよ。どうして洗わなかったの」と尋ねる。そこでそれまでの経過を話した。すると「あなた蓋をしてボタンを押したの?」と不思議そうな顔をしながら言う。「イヤ、蓋は開けたままだったんだけど…」。「も~、あなたっていう人は何も知らないのね。中に入れたら蓋を閉めてボタンを押すのよ!考えたら分かるでしょ。本当にあなたって常識がないわね。子どもだってそれ位気付くでしょう。蓋を閉めなくては回らない位は…。もう本当にボンボンなのだからあなたは…」。
家内が蓋を閉めボタンを押すと、3日も動かなかった洗濯機がいつものように回り始めた。洗濯機の中に入っていた洗濯物もほっとしたことだろう。何せ3日も入りっぱなしになっていたのだから…。
次の日洗ったシャツはきちんと折り畳まれ、タンスの中に入っていた。改めて家内の凄さをまざまざと知らされた。元巨人の中畑選手が言っていたがやはり『男は女より長生きしてはいけない』。まさにその通り!!