保健所や小児科へ当クリニックでお産された方が行かれ、そこで母子手帳を差し出すと、表紙を見るなりその係の方から「谷口先生の所でお産されたのですか?」と言われたそうである。何故か?それは母子手帳の表紙に生まれた時の赤ちゃんの写真が貼ってあるからだ。何故そうしているのか?その理由は母子手帳を大切に扱って欲しいという願いがあるからだ。
母子手帳は1948年(昭和23年)に初めて作られた。その当時まだ戦後混乱の時代だった。子ども達も充分な栄養が与えられず、色々な感染症などで亡くなる子どもも多かった。そこで母と子の健康を守ろうと作られたのである。1966年より母子健康手帳と名称が変わり、今は宮崎市のように親子健康手帳という名称になっているものもある。いずれにせよ親子の記録として残る大切なものなのである。
それを開くと妊婦自身の記録の蘭がある。そこには妊娠した時から分娩するまでの母親の心を綴るページがる。4週間ごとに全部で4ページ。当クリニックではその時その時にその欄を書いてもらうことにしている。それは我が子への小さな日記と考えても良い。勿論健診で行われる母親の体重、血圧、子宮の大きさなどが記入される。それを見ることで異常を見つけることが出来るのだ。
当院でも妊婦健診の度に記録を記入していく。それは後世に残るものなので書き漏れがないように、なるべく細かく記入するようにしている。スタンプが曲がっていたり修正液を使ったりするなんてもっての他なのである。そうやって生まれて6年間、つまり小学校に入学するまで記録が残る。
それをお母さん方が大切に保存しておくのだ。それを見ると生まれてから6年間にどうやって育てていったか一目瞭然である。特に予防接種の欄に何の予防接種をしているのか書いてあるので、もし病気になったとしてもそれを見ればその病気にかかっているかどうかを知ることが出来る。
その母子手帳を将来子どもが妊娠した時にプレゼントする母親も多いという。そのページを開くとその子供を出産し子育てする時に、いかに自分が大切に育てられたのかを知ることになる。だから母子手帳は丁寧に誰でも分かるように分かりやすく記入しなくてはいけないのである。
是非一度自分の母子手帳を見せてもらうと良い。そこには母親の愛情が一杯詰まっている。