朝早く愛犬「ロキ」と散歩に出掛ける。扉を開けると、嬉しくて尻尾を振り吠える。家族でもこんな嬉しそうな表情をしてくれないので、心をくすぐられる。

 出掛ける時は自転車である。近くの大淀川の堤防まで自転車に乗り、リードを手で持ちながら伴走して行く。時々ロキが急に立ち止る。ウンチの為である。急に止まるので何回か転びそうになったことがある。

 ウンチをいつしても良いように、自転車のカゴの中には割り箸。これでウンチを摘まむ。割とコロコロウンチなので掴みやすい。それとティッシュの底の部分を半分に切ったもの。これはウンチをすくう為に必要なもの。それに細かい砂。もし万が一、便が柔らかくて地面にこびり付いた時にその上にかけるものである。そのような気を遣わないといけないので、散歩といっても大変な準備が必要なのである。

 リードを持ち自転車で並走するのだが、ロキは時速25km位のスピードが出る。それはマラソンランナーより速い速度である。昨日は遂に27kmのスピード記録を達成。自転車に速度計が付いているので間違いない。しかしそれも2~300mの間である。そのあとはやはり疲れるのだろう。ハーハーと言いながら逆に私から引っ張られる。何せ今年18歳の老犬だ。人間でいうと80歳近くだろうか。

 さて、大淀川の堤防には桜の木が何十本も植えてある。3月末位から咲き始め、4月初旬まで楽しめる。今年は開花も早かったが、散るのも早く4月初めには葉桜になってきた。その花びらがパラパラと散る下を自転車で通るというのは中々風情があり好きである。

 散歩していると色々な人とすれちがう。30代~40代女性で何となく「訳あり」というような人が3人いる。1人はピンクの上下服に幅広のツバの帽子をかぶり、いつも携帯で話をしている。その姿は林家パー子さんみたいである。1人は黙々と脇目もふらずにウォーキング。もう1人は小柄な女性で、いつも不機嫌そうな顔をして歩いている。

 他に60代位の夫婦が毎朝散歩している。いつもお互いに楽しそうに会話をしながら歩いている。こんな夫婦に将来なれたら本当に幸せだろうなと羨ましく思いながらすれちがう。

 やはり60代の2人連れのおばちゃんがいる。スターウォーズに出てくるロボット、「C-3」と「R2」みたいに、1人はヒョロッと、1人はズングリムックリで本当に仲良くケラケラ笑いながら歩いている。こんな人達はきっとストレスも溜まらず、長生き出来るだろうなと羨ましくなる。

 車イスに老いた親を乗せ押してくる娘さんもいる。いずれ私もああいう風になるのだろう。だが、果たして娘達はそうしてくれるかどうか少し心配しながらすれちがう。

 普通に会話しながらランニングしている若者達の集団もいる。私なんか喋りながら歩くのもしんどいのに、さすが若いなーと羨ましく思う。

 散歩している際、色々な人とすれちがう度にその人達の人生のことを考えてしまう。若い人だったらどんな未来を夢見ているのだろう。夫婦の場合はどんな風にして子どもに接し、育てていったのだろう。お年寄りの場合は果たしてこの人は幸せな人世を歩んできたのだろうか。それとも辛い人生だったのだろうか?などなど…。空想癖のある私にとって、人と擦れ違うということはその人の過去・現在・未来のことを想像することである。それはつまり自分の過去・現在・未来を考えることなのかもしれない。