エッセイを書くようになり、新聞の投稿をよく読むようになった。
その中で気に入ったのを切り抜き、親子・夫婦・老後・子育て・医療などのジャンルに分け、
それをそれぞれコピーして読むことにしている。
それは15年程前から始め、今まで目を通してきたエッセイは平均毎週10編。
つまりトータルで1万編近くになっている。
その中でも、最近ちょっとほろりとさせられるエッセイを紹介する。
これは『男のひといき』という朝日新聞に寄せられたエッセイである。
『石になった妻の遺骨』
3度目のお盆を迎えた。妻が癌で50代の若さで亡くなったのは3年前の秋。
妻の三回忌までにはと思っていたお墓だが、今になってもどうしてもつくる気になれないでいる。
昨年、遺骨を『石』にするというサービスを知った。
遺骨を高温で溶かし、冷やして結晶化させるという。
唐突な私の提案を、高校生の息子は受け入れてくれ、妻の遺骨は3個の石になった。
丸みを帯びた小さな白い石は、妻そのものであり、小さな墓石のようだ。
石には、私のものには『妻 ようこ』と、息子のものには『母 ようこ』と刻んでもらった。
そしてもう一つの石にも『母 ようこ』と刻んでもらった。
妻には前夫との間に息子がいたが、3歳の時に別れたきり、再び会う事はなかった。
妻の死後、思いもかけずその彼と出会い、以来、妻の思いを彼に伝えて行く事が私の役目と思っている。
もう一つの石を彼に渡す事に躊躇はなかった。
後日、彼から「結婚式に石を胸に忍ばせて臨みました。
母も喜んでくれたのではないかと思っております」とのメールが届いた。
思わず頬がゆるんだ。
エッセイは原稿用紙1枚から書ける。題材は近くにいくらでも転がっている。
しかしそれに気付かない事が多い。あるいは思っていてもすぐにそれを忘れたりする。
あまり肩に力を入れると先に進まない。ちょっと肩の力を抜いて書くのがちょうど良い。
原稿用紙1枚程度のエッセイは、2~3分もあれば読む事が出来る。
ただ起承転結になっていないと、ただの日記みたいになり、読む人を感動させる事は出来ない。
日常何処でも転がっている題材に手を加え、作っては壊し、
無駄な所は削り、文章が少しずつ出来上がる。その過程は楽しくもあり苦しくもある。
だが五感を磨くという訓練をしたいなら、是非エッセイを書いてみて欲しい。
さて、朝日新聞には『ひととき』という投稿欄がある。
それは女性に限られ、男性は投稿する事は出来ない。
ところが4~5年前から毎週日曜日だけは『男のひととき』という投稿欄が設けられた。
やはり女性ばかりでは不公平という事で男性の投稿欄が設けられたのであろう。
私はこの欄が始まって3回目の時に載った。そして今年の8月7日に2作目が載った。
これは全国版なので、北は北海道から南は沖縄までの新聞に載る。
投稿する側としては最高の名誉なのである。いつか3作目を狙いたい。
しかし柳の下に3匹目のどじょうは居るのかなぁ~。