気が付かない心配りに気付く時ほど感激は大きいものである。例えば錠剤。普段から我々が飲み慣れている薬だが、錠剤は必ず2錠が1ペアになっている。これは1錠ずつにすると錠剤が入っている周りの硬いプラスティック部分を間違って呑み込んでしまわないようにである。それと1錠ずつにすると実に取り出しにくい。だが我々は服用しているのにそういう気遣いに気が付かない。

 ボールペンもよく見るとキャップに扇風機の羽みたいな穴が開いている。これは小さな子どもが万が一口に入れても呼吸が出来るように空気穴になっているもので、万が一キャップを飲み込んでも窒息しないようになっている。『細・太』で使えるマジックペンのキャップにも穴が開いている。但し大きい方は大きいのでそのまま飲み込むことはないので穴はない。

探せば他にもたくさんあるのかもしれない。きっと見つけたら何倍も感激することでしょう。

逆に心配りのないのでがっかりすることもある。例えば道路の端に描いてある自転車専用道路を示す青い矢羽根マーク。この上を自転車は通って下さいというマークだ。歩道をスピードを出して歩行者や車とぶつかったりしている事故が多発しているので、それを避けようという狙いがある。自転車好きの私にとっては有難い。だがそのマークには塗装がしてあるので、5mm位の段差がある。だからそのマークの上を通る度にゴツンゴツンとお尻に響くのである。だからそのマークのほんの僅か横を通る。そうすればお尻に響くこともない。場所によってはそれが20cm位の幅のブルーラインになっている。こちらの方はお尻に響かない。だからこちらの方が私にとっては親切だと思う。

納豆についている小さなビニール入りの醤油。ギザギザが小さ過ぎて私の大きな手では裂くのが大変なのである。上手くいっても裂けた瞬間醤油が飛び散り、酷い時は目の中に入ったりする。だからいつもハサミでその部分を切って慎重に中身を出す。そうすることによって安心して納豆にかけることが出来る。だから納豆を食べるという事を考えただけで憂鬱になる。

 普段使っている蛍光ペン。片方は細、もう一方は極細になっている。今まで使っていたのは、細い方だけその蛍光ペンの色のキャップの先端の色が分かるようになっている。ペン立てに細い所を下にして立てると外からは何の色か分からない。その度に取り出して確認する必要があった。ある日カタログを見ていたら、両方とも色が付いている蛍光ペンを見つけた。それからはその方を利用していて、すぐ分かるから便利だ。

又、今までずっと入浴剤は固形のものを用いていた。すると先日家内がそれを使うと浴槽にそのカスみたいなものが付いて取れないという。そこで液体の入浴剤を買ってきた。蓋を開け浴槽内に入れようとしたが中身が出てこない。何故だろうと思っていたら使い方がその容器に書いてあった。それはあまりにも小さい文字で読めない。普段はメガネなしで新聞は読める私だが、そういう私でもよく見えないので、虫メガネを持ってきて見た。すると『①フタを開け②ボトルを押して矢印の線まで液を出します③浴槽の中に入れかき混ぜてから入浴して下さい』と書いてある。何だそういうことかとようやく理解できた。

 使う方としては勝手が良い方が良いに決まっている。いつも使う相手が使う場面を想像しながら製品を作るという事が大切だろう。