エッセイを書くきっかけになったのは、患者さんとのコミュニケーションをとろうと、
院内新聞のコアラ通信を始めたというのが理由だ。コアラ通信を含め、
2000偏近くのエッセイを今まで書いた。
エッセイを書く上で一番大事な事は『何を書くか』つまりネタを探す事である。
調子が良い時は一日何個も見つかるが、調子が悪い時は1週間も浮かばない事がある。
いつ思いつくか分からないので、常にメモ帳を持ち歩いていて、
財布の中にも2つ折りにした紙と、いつでもメモれるようゴルフ場で使う細い鉛筆が入っている。
車の中、外来の机、リビングルームの机には必ずメモ帳が置いてある。
『ネタ』は文字のごとく『タネ』みたいなもので、
それを蒔くと気が付いたらそれから小さな芽が出て、葉を茂らせ大きな木に成長していく。
それをうまく育てていき、起承転結を考え、エッセイというものが完成する。
エッセイの良い点は文章の長さが自由でいいという事である。
それが100文字でも、500文字でも1000文字でもよく、気楽に書けるので、
いつでもどこでも書ける。
エッセイを書く為のノートもいろんな部屋に置いてあり、
『書きたい時が吉日』なのである。書き始めたら途中で止める事はしない。
30分位かけて一気に書いてしまうのである。
それから1日そのまま置きっ放しにして、次の日もう一度その文章を見て、
流れの悪い所、意味が分かりにくい所などをチェックする。
その後スタッフや家族に見てもらい、間違った言葉や差別用語、
分かりにくい個所などを訂正してもらう。
そしてコアラ通信として毎週月曜日に世に出ていくのだ。
コアラ通信は今年の秋ついに1000号を迎える。
エッセイをまとめた本も『うぶごえ』『女が女を知る本』『こもれび』『キッズ通り1/8』
『男がお産する日』『パンドラのおもちゃ箱』『GO!GO!パラダイス』『心ぽかぽか』
『戦争と人間』『二十一世紀への提言』『夫婦』『未来への処方箋』『投稿マニア』と
13冊になった。
その他にも『みやざきエッセイストクラブ』から毎年出ている本も今年で15冊目となる。
ブログも今年の春くらいから本格的になり、
週に2~3偏のエッセイをホームページに載せている。
ブログは400文字位の短い文章でいいので、
外来のちょっと時間がある時とか、食後ちょっと一息の時などに、
5分か10分で一つのエッセイを書き、ホームページのブログとして載せている。
エッセイを書いているといろんな人から反響がある。
先日は私の超ケチな話、例えば靴下は同じ色の物を何足も買い、
もし破けたら破れてない同士で履くといいとか、シャンプーは使い終わった後、
お湯を入れよく振ると3回分は使えるという話の中に、
チューブに入ったわさびの残り少なくなった時の使い方を書いた。
チューブの先を醤油の中につけ、それをチューブで吸い取れば
最後の最後まで残さず使えるというエッセイである。
それを読んだ兄からは「僕もケチだけど、チューブのわさびで醤油を吸い込んで
それを又使うなんていうことまではさすがに考えつかないなぁ」と言われた。
また病院の1Fのエレベーターの前に、家内が「椅子があったら助かるんじゃない。
だってご年配の方も来られるわけだから…ちょっと座って一息入れる椅子が必要よ」と言う。
「そんなことはないだろう。置いたら邪魔だよ」と言った後に
試しに置いてみたら、今、一番使っているのは私だ、というエッセイを書いたら、
ある知人は「その話に耳をつまされたわ」と言われた。
さらには、9月2日の家内の誕生日に大好きなコスモスの花を贈る話で、
その時期にまだ咲いていないコスモスを苦労して探し贈ったら家内が
「私、その辺りの野原に何気なく咲いているコスモスが大好きなの。
そんな花屋で買ったコスモスなんか全然嬉しくないわ」
というエッセイを読んで、友人が「コスモスを見る度に先生の奥様を思い出すわ」と言っていた。
一つのエッセイがいろんな人の五感を呼び起こし、それで人生を楽しく過ごしたり、
また毎日の何気ない一日の中に楽しい事がいろいろ潜んでいる事を知ってもらえることほど嬉しい事はない。
これからもエッセイのネタを探し、人に面白かったよと言われるよう頑張りたい。
但し、家族・友人がどんどんと離れていく気がすることがある。
何せ私と話をしただけでネタにされるのだから。
家内などは「もう慣れっこになったわ」と言っているけど…。