先日起こった関越自動車道での夜行バスの悲劇の原因はその安さだった。
何せ金沢―東京までの約500㎞を片道3500円で行けるのだから、まさに信じられない位の安さ。
その実態はバスのシートベルトは壊れていて使用不可の整備不良。
運転していたのは日当1万円の日雇い、ほとんど夜行バスを運転したことのないドライバー。
しかもバス会社は本人の健康チェックもせず本人まかせ。
点呼はおろかアルコールチェックもせず、いつ誰が運転しているのかも分からないと
社長は記者会見で述べていた。運行記録もその日の予定表もないような実にいい加減。
そのバス会社に委託した旅行会社も、その会社の内容は全く知らず、
安いからと契約したという。まさに安さの連鎖から起きた事故だ。
 昨年起こった焼肉事件もそうだ。とにかく安いという評判で客が押し掛けていたという。
原因となったユッケも、安くて仕入れチェックもせず、そのまま出荷したという。
その事件以来、ユッケは販売禁止になりユッケ好きを落胆させた。
 電気製品などを売っている量販店もひどい店がある。先日電池を買いに行った。
売場で400円位の電池を手に取りレジに並んだ。すると10人位の人が並んでいる。
何でこんなに並んでいるのかと思ったら、レジに店員が1人しかいない。
普通だったら隣りのレジに店員が飛んできて「こちらにどうぞ」と誘導するのだが、
そんな気配など全くない。しかも先頭の客が「これはポイントが付くはずなんですが~」
と文句を言っている。客と店員のやりとりが延々と続いていて、全く列が短くならないのだ。
結局400円位の電池を買うのに20分もかかった。
 普段はあまりイライラしない自分であるが、この時だけはブチ切れそうになった。
だが周りの人はそういう事に慣れているのか、文句も言わず並んでいた。
もう2度と行くもんかと私は思った。
だが、日本一安いというキャッチフレーズで客の方が仕方ないんじゃないと思っているのかもしれない。
そう考えないと客の反応が理解出来ない。
 先日も広島のホテルで火事があった。
ホームページには市内で一番安いホテルというふれ込みで一泊3800円からという。
ホームページで見る限り豪華に見えるが、実は築50年という老朽化した建物で、
廊下には電燈もついてなく暗かったという。
しかも窓にはベニアが打ちつけてあり、火事になったら逃げられない構造になっていたという。
 先日、娘に「訳ありミカン」というのを送った。
5㎏で送料込みで3500円。ミカン好きの娘が大喜びするかと思いきや
「この前のあれ何なのー」と言う。硬くて食べられなかったり、むけなかったりするのも中にはあったという。
せっかく送ってあげたのに、こんなに文句を言われる筋合いもないと思うのだが、
それでも事情を知らない娘は御立腹だった。
 学生時代、アメ横で毛ガニを売っていた。
普段は一匹で2000円もするものが、5匹で500円とある。
毛ガニなど高価で食べた事はないので、その値段に目がくらみ買うことにした。
そこの店員が「今日中に食べてね」と念を押したが、
帰った頃にはすっかりそんなこと忘れ、冷蔵庫に入れて次の日に食べた。
何か変な味がしたが。毛ガニはこんな味がするものだろうと全部食べた。
すると翌日から1週間下痢が止まらず、5㎏も痩せた。
それからしばらくの間、毛ガニを見ただけで条件反射的に下痢をしていた。
それ以来「安いものには何かワケがある」と気を付けるようになったのである。
 一昔前では「安かろう悪かろう」と最初から「安いんだから仕方ない」と思ったり
「安かったんだからまあこんなものか・・・」と思っていた。
だが、最近は「安かろう、でもとっても良かった」というものがある。
「安かろう、まずかろう」だったものが、「安かろう、旨かろう」になっているのだ。
 先日も、友人と夜の街に出たら、10品の食物を選べ、しかも飲み放題で2980円というチラシを配っていた。
半信半疑であったがその店に行ってみた。
2人でかなり飲んで食事は2人分の20品頼んだが結局食べきれず残してしまった。
会計を済ます時「こんな安くて大丈夫だろうか」と友人と他人事ながら心配した。
 しかしあまりにも安くて、何か変だなというものには、もうちょっと警戒心を持った方が良さそうだ。
でないと気が付いたら自分の命まで奪われてしまう。