孫の「木の羽」が生まれて1歳を迎えた。ほんの少し言葉も覚え、芸も出来るようになり、私達夫婦を楽しませてくれる。一挙一動が愛らしくてたまらない。

 さて、私達夫婦も5人の子供を育ててきたので、子育てについてプロとは言わないまでも、その心得は身につけてきたつもりだった。しかしここ2~30年で子育ては大きく変わってきた。例えば「オムツ」。我々の子育ての時はまだ紙オムツなど使う家庭はほとんどなかった。おばあちゃんが縫ってくれた布オムツを用い、汚れたら洗い、それを繰り返し使っていた。

 雨が続く梅雨の時期などは干す所がなく、家中にロープを張ってそこで乾かしていた。だから私が住んでいた狭い官舎は、部屋中に布オムツがヒラヒラたなびいていた。食事するちゃぶ台から見上げると、オムツが何枚もロープにぶら下がっており、オムツの隙間からテレビを観ながら食事をする始末。

 外出する時は今のバギーなどはまだなく、クーファンと呼ばれる大きな手提げカゴに赤ちゃんを入れ、ぶら下げて持ち歩く。車に乗る時もカゴのまま座席に乗せた。一度はカゴの片方のヒモが切れ、子供が歩道にコロコロと転がって行った事もある。今では考えられない位の乱暴な育児だったと反省している。

 離乳食などもレトルトなどはまだポピュラーではなく、カボチャなどをすり潰したりして離乳食を作っていた。買い物などで子どもを置いていかなくてはならない時、隣近所に声をかければいつでも預かってもらえた。

 泣いてすぐ抱っこすると「そんなことしたら抱き癖がつくわよ」と回りの人達は口々に注意していた。おっぱいは3時間ごとに飲ませること。それまではお腹がすいて泣いても上げてはいけない。まじめな母親は目覚まし時計で正確に3時間ごとに飲ませていた。乳幼児に食べ物を与える際は口移しで上げてもよかった。おハシやスプーンも普通に共用で使っていた。今はその当時と事情が全く違う。泣きはじめたらまず抱っこすること。母乳は好きな時いつでも上げて良い、スプーンなどは共用するとムシバ菌が幼児に移るので絶対にしてはいけない。車に乗せる時はチャイルドシートに乗せ、オムツはほとんど紙オムツになった。離乳食はスーパーでいくらでも売っている。外出する時もバギーに乗せて出掛けることが出来、昔に比べると随分楽になった。

 そんな時代の変化で、子育ても変わってきた。だから孫が生まれてみると、いろいろと分からない事ばかりだ。息子からは子育てについていろいろ質問されるが、トンチンカンなことも多い。例えばチャイルドシート。まずどうやって乗せるのか、又ベッドはどうやって固定するのかさっぱり分からない。ベビーカーも折りたためて小回りが利くものが良いか、大きく安定したのが良いのか分からない。仕方ないので、子ども達は色々な情報を雑誌やインターネットで調べてチョイスしている。

 チャイルドシートはその開発に1億円かけたダミー人形を作り、実際に衝突させたりしてデータを集めるのだそうだ。そうやって作られたアップリカのチャイルドシートは、年間30万台も売れ、世界で一番売れたチャイルドシートになった。

 又ベビーバギーも父親の心をくすぐる様な、まるでスポーツカー仕様のようなものを備えたものや、ワンタッチであっという間に折りたたみ出来るものがよく売れている。又ベビーバギーには、一台25万円もするものもあるそうだが、それでもキャッシュでポーンと買う人もいて、あっという間に売り切れるそうである。

 時代によって子育ても変わっているのには驚かされる。しかし親が子供を思う気持ち、孫を可愛いと思う気持ちはいつの時代になっても変わらない。

「木の羽」の成長を見守りながら毎日そう思う。