ある小児科の先生から聞いた話。

 小学校に入ってもおネショをする子供がいた。いくら寝る前にトイレに行かせておいても、明け方布団にシャーッとやってしまう。

 両親は、上の子供はおネショしないのに何故この子だけはおネショするのかしらと不思議でしょうがない。寝る前になるべく水分をとらなくしたり、寝る前に子供におまじないをしたりした。それでもおネショは止まらない。とうとう小児科のトビラをたたいた。

 小児科医は両親に

 「この薬を上げます。この薬は高くて1万円もします。しかもどこにも売っていません。保険もつかえません。この薬を1日3回、朝、昼、晩と飲ませて下さい。おネショをしなかった日は薬を2錠に減らして下さい。そしてその時にこれが一番大事なのですが、おネショしなくて感心、感心と頭を撫でてあげて下さい。トイレも行きたくなかったら、行かせなくても結構です」。

 「それでも本当によくなるんですか?」

 「もちろん。この薬で治らなかった子は、今まで一人もいません。必ず治りますよ」。

両親は、半信半疑の気持ちのまま病院を出ていった。

 10日ほどして、両親が来られた。

 「この薬は効きますね。この薬を飲ませたら、1週間後にはぴたりと止まりました。もうびっくりしましたね。今までは、シーツの下にビニールを敷いて寝かせなくてはならなかったのですが、それも無くなりました」。 

 「ネ。そうでしょう。この薬でぴったりとおネショが止まったでしょう。」

 「本当に、これで学校の修学旅行に行かせるのを迷っていたのですが、安心して行かせることができます」。

 「それは良かったですね」。

 「ところで先生。私の知っている人にも何人かおネショする子いるんですよ。その子達にもこの薬を飲ませて、おネショしないようにしてあげたいのですが」。

 「そりゃいい考えですが、この薬を飲んだだけでは治らないんですよ」。

 「でもうちの子は、ぴたっとおネショしなくなったのですよ。10年間悩んでいた事がうそのようです。この魔法を是非飲ませて、他の子達も是非修学旅行に連れて行きたいのですが」。

 「あの、実を言うとこの薬はどこにでもあるビタミン剤なのです。ですからこの薬を飲んでもおネショは治りません」。

 「それはうそでしょう。この薬を飲んだおかげでうちの子は、おネショがぴたりと止まったのですから。単なるビタミン剤で1万円も取るなんてそりゃ詐欺じゃないですか」。

「ええ、私も詐欺だと思います。でも10年間悩んでいたおネショが治れば安いもんだと思いますが…」。

 「そりゃそうですが、なぜこのビタミン剤がおネショに効いたのですか?」

 「この薬を飲ませる時の注意を言いましたよね。」

 「ええ、寝る前は水分は自由に飲ませトイレも自由。とお伺いしました」。

 「もう一つ教えましたよね」。

 「ええ、おネショしない時は薬を減らし、子供の頭を撫でてあげる。それがどうかしましたか」。

 「ええ、それが一番の薬なのです。おしっこの事を気にせず、薬で治せると親共々信じさせそして子供を褒める。これでほとんどおネショは治るんですよ。はい、これこの間預かっていた1万円お返しします」。