先日、兄夫婦と一緒に食事をした。その際ビールを注文したら、20cm四方の箱をウヤウヤと一緒に抱えてきた。何だろうと思っていたら店員が「お客様、今ビールを頼まれた方にはスピードクジが付いておりまして、もし当たればもう一杯というサービスになっております。どうぞ一枚ずつお引き下さい。」と言う。兄と「こんなサービスの時にこの店に来てよかったネ、ラッキー、ラッキー。」と言いながら一枚ずつ引いた。ビールを飲むのもソコソコにスピードクジを箸の反対側で擦ると、見事に「ハズレ」。まぁ何杯か飲む訳だし、いずれ当たるだろうと思いながら飲んだ。兄はどうやらそのクジのことが気になるらしく、あっという間に一杯目を飲み干した。私も負けじと直ぐ注文する為にジョッキを空けた。
さて2回目のクジだ。今度は当たるだろうと、クジの入っているボックスに手を入れよくかき混ぜて引いた。私も兄と同じ様にやってみた。又すぐ飲む前に擦ってみた。しかし二人とも又「ハズレ」。すると店員がすかさず「お客様、このハズレ券5枚で一杯飲めますから、捨てないで取っておいて下さい」と言う。「当たらない場合のことも考えているなんて、何とサービスの良い店だね。こりゃ又来なくちゃ」と兄と話をした。
二人共あっという間にビールを飲みほした。今度は二人とも三杯目である。手を上げ店員を呼ぶと「ビール二杯頂だいね」と又二つ注文した。すぐ店員がビールを持ってきたので、又スピードクジを箸の反対側で擦ってみた。すると又「ハズレ」。「又ハズレかぁ」と兄と言いながら「本当に当たりクジって入っているの?」と店員にくってかかった。すると店員が「はい。何枚かに一枚はアタリが入っています」と答えた。二人で首を捻りながら「本当かな。もう少し沢山アタリが入っていても良いのになぁ」とジョッキを空けた。
さて今度は6枚ハズレクジがあるのでその内の5枚で一杯飲める計算になる。店員に「ハーイ、ビール2杯ネ。一杯はこのハズレ券を使うけどいい?」と尋ねると「はいドーゾ。でもハズレ券で飲まれた場合、クジはありませんが…」「いい、いい。なくても一杯飲めるんだったら」と2杯注文した。一杯にはスピードクジが付いているので又それを擦ってみた。すると又「ハズレ」である。これでハズレクジが2枚になったことになる。
もうビール腹になったが、まだハズレ券が2枚ある。これを使わない手はない。いつもならそろそろ焼酎を頼むのだが、ビール腹にもかかわらず又2杯頼んだ。すると店員がウヤウヤしく又クジの入ったボックスを持ってきた。「今度は当たるだろう」と兄と勝手なことを言いながら引いたら又見事ハズレ。「あ~ぁ」と溜息をつきながら無理をしてビールをお腹に流し込んだ。
気がつくと当たり前のことだが、ハズレ券が4枚目の前に置かれている。あと一つハズレが出れば又ビール一杯飲めることになる。そこで兄が一杯だけ注文した。ほろ酔い加減の中で擦ってみるとやはり又ハズレ。ほらこれで5枚になったと自慢気に言う。そのままクジを使わないのはもったいないので、私がその5枚のハズレ券を店員に手渡しビールを頼んだ。目の前に置かれたビールは、いつものビールというものではなく、こんなはずじゃなかったというビールだった。計二人で12杯ジョッキを空けた。
店を出る時に兄が言った。「あのクジさえなければ、こんなに飲まなかったのになぁ」私も言った。「あのハズレ5枚がミソだね、あれは本当に上手く考えてある」二人でロレツの回らない会話をし家に帰ると、二人ともバタンキュー。気がついたら次の日の朝であった。今度この店へ行く時はもうその手には乗らないぞと兄弟で誓った。