先日、あるイベント会場に足を運んだ。その中に似顔絵コーナーというのがあり、
1枚500円で描いてもらえるというので描いてもらう事にした。
ちょっと緊張した面持ちで、椅子に座ると「そんなに構えなくて普通にしていて結構ですよ」
と言われた。じっとしていないと描けないのかと思っていたら普通にしていていいと言う。
そこで話しかけてみた。「似顔絵を描くって難しいでしょうね」
「いや、私なんか画家でもないし、片手間に描いているのでそんな事考えた事もありませんね」
「コツは何かありますか?」
「そうですね、その人の顔の特徴を少しオーバーに描くことでしょうか」
「私なんかいつも家内にあなたの顔は馬みたいに長いと言われるんですが、やっぱりそう見えます?」
「いや、そうでもないと思いますがね・・・」描いているその手元を見ると色紙からはみ出るほど顔が長く描いてある。
やっぱりねぇ~と思った。
「女性から『美人に描いてね』なんて言われませんか?」
「そうですね、よく言われます。しかしそう描くと、その人の特徴が無くなる訳ですから、そのままありのまま、
それなりに描く事にしてます。正直が一番です」
「中年女性の中には『なるべく若く描いてね』と言う人も多いんじゃないですか?」
「そうですね、『シワとか白髪なんか描かなくていいからね』と言われる人は結構いらっしゃいますね。
まぁ、出来るだけリクエストには応えるようにしているのですが・・・」
「中には『もっと若くて美人に描いてくれるのかと思ってお願いしたのに・・・』と言う人もいるんじゃないですか?」
「まぁそんな人は居ないですが、それでも不満気な人は居ますね。何せ中年女性はやはり怖いですから、
ある程度若くて美人にデフォルメしてあげると、それだけで喜びますね」。
話をしているうちに顔の輪郭が出来てきた。次は髪の毛だ。「少し髪の毛を多く描いてもらえませんか・・・」
と言いそうになったが、そこをぐっと堪えていると、太い筆で3回髪の線を描いた。「えっそれだけなの?」と思ったが、
まぁとりあえず見たものそのままに描いてもらおうと思い何も言わない事にした。
彩色をしてあっという間に出来上がり、日付とサインを入れてもらい完成。
500円払い手に持ってみた。ふ~ん似てるような似てないような。不思議な気がしながら会場をあとにした。
家に帰り、孫にその似顔絵を見せ「これ誰だか分かる?」と尋ねたら即座に「おじいちゃん」と答えた。
やはりよく似ているらしい。
実は8年前にも似顔絵を描いてもらった事がある。それは自分の部屋に飾ってあるのでそれを横にして比較してみた。
すると微妙に年老いているのが分かる。見た目も分かるのであるが、何だか精神的に老いているのが分かるのである。
アルバムの写真で比較してみた。写真では明らかに年齢を重ねた顔がある。しかし今の方が若く見える。
それはきっと年老いたと言われるのに反発し、今流行の服を着て若作りしているからだろうか。
2つの似顔絵を並べて飾って置くことにした。あと10年位したら古希。その時はどんな顔に描いてもらえるのだろう。
楽しみだ。皆様も是非とも一度似顔絵を描いてもらう事をお勧めしたい。それを見る事により、
今の自分の外見だけでなく内面を垣間見る事が出来る。似顔絵というのは実に不思議なものだ。