コロナ禍で外に出る機会が減り、人と話をする機会が減っている。そこで出来るだけ会話することを心掛けている。元々喋るのが苦手な私には、ちょっとドキドキすることもある。何せ「寡黙な先生」といつも患者さんに言われる位だからだ。

 先日愛犬ロキの餌がないのに気が付いたのが夜6時40分。量販店の営業は7時まで。慌てて量販店に駆け付け店に入ったのは6時55分。餌をカゴに入れレジに並んだのが6時59分。いつも顔馴染みの愛想の良い店員さんに「ようやく間に合いました。もし間に合わなかったら愛犬が飢え死にするところでしたよ」と話しかけた。「それは良かったですね。飢え死にしなくて…」と言ってくれるかと思ったら、いつも愛想の良い感じの声で「532円頂きます。はい1000円からですね」愛犬ロキのことを何か心配してくれてそのことを言ってくれるかと思っていたら、「はいお釣りの468円お返しします」愛犬のことは何も触れてくれなかった。何か一言言ってくれると思った私はちょっとショックな気持ちで店を出た。

 先日近くのコンビニに寄ったらおでんを売っていた。いつも冬になるとこのおでんを楽しみしている。今年はコロナ禍で販売中止と新聞に載っていたので心配していたが売っていた。

 レジでジュース1本を買い求め「美味しそうなおでんですネ、何が一番美味しいですか?」と尋ねてみたが店員は何も答えず「63円のおつりです」と手渡しただけだった。せめて「でしょ、このコンビニのおでんは美味しいと評判なんですよ。私もよく食べます」なんていう会話を期待した私にとってショックだった。

 去年の夏、Tシャッを買った。サイズがXLであればどんな柄でも良い私は、適当に選んでそれを着てコンビニに行った。レジにはいかにも無口でシャイそうなひょろっとした青年が立っていた。

 お金を払い立ち去ろうとすると、その店員が突然「その服お似合いですネ、どこで買われたのですか?」と尋ねてくるので、実は近くの洋品店で買ったというと羨ましそうに「その背中に描いているキャラクター、私大好きなんです。僕も欲しいな、そのキャラクターはですね…」延々と話しが続く。私も早く帰りたかったので「ごめん急いでいるんで」と店を出た。きっと今流行りのオタクなのだろう。その目付きはお金を払う前とは明らかに違っていた。

 さて、何故今こんなに会話が少ないのだろうと考えてみた。若くてあまり喋る内容を考えつかないのだろうか?人と喋るのが面倒くさい人が増えたのだろうか?

 色々考えていたら結論が出た。それはスマホでメールやラインを使い、お互い会話しているからだ。私も毎日のようにそれを利用している。だから気が付いたら最近あまり電話をかけないようになった。メールだと時間を気にしないでいつでも打てる。そして知らないうちに返事が返ってくる。こんな相手に気を使わないで良いツールは他にない。それにもう慣れてしまっているのである。

 先日TVでホルモン40分間無料で飲み放題の店を紹介していた。それは仲間と店に入り喋らないで食べたら無料になるという仕組みだ。それは酒が入るとどうしても大声になりコロナウイルスがばら撒かれる可能性がある。それを避けて飲んでもらおうというアイデアである。

 2人組が入ってきて座ると、次々と料理と飲み物が運ばれてくる。2人は美味しそうにパクパク食べている。無料であるのでそれはそれは嬉し顔である。「こんなうまい話があるんだー」という信じられないという表情である。

 しかし10分も経つと様子が変わった。どうしても2人で会話したくなったのだ。すると2人はスマホをポケットから出し、お互いLINEで会話を始めた。これなら喋らなくても済む。そして制限時間の40分が経った。食べ終わった後アナウンサーが2人にインタビューしていた。

 「いくら無料でも話さないで食べ飲みするというのは無理ですね。美味しいはずなんですが、喋ってはいけないということでついLINEで会話しました。又来たいかと言うともう来たくないですね!」やはりお喋りをして初めて食事というものは楽しいものらしい。

 私としてはやはり「おはようございます」「こんにちは」「ありがとうございます」「失礼します」「よろしいですか?」「暑いですね(寒いですね)」などの人に対する呼びかけは大切だと思う。そこからコミュニケーションというものは始まる。是非とも面倒くさがらずに一声かけてみて下さい。又新しい世界が広がります