2~3週間前から胃の調子が悪かった。食べる時に何か喉につかえる感じもある。そのうちに良くなるだろうと思っていたが、益々悪くなっていった。胃腸科で一度検査しなくてはと思っていたが、なかなかふんぎりがつかない。先週も行く時間はあったのだが、異常があると言われるのが怖くて延び延びになっていた。しかしやはり行かなくてはと思い予約した。
前夜は10時以降は絶食との事で、食事の後に焼き鳥を買って来て食べた。これが食べ収めになるかもしれないと、悲壮な気持ちだった。その後ベッドに横になり、気が付いたら眠りについていた。ところが眠りが浅いのか何回も夢を見る。
いつも見る夢は「ちょっと出掛けて来る」と出掛け、気が付いたらそこは外国で、自分の病院からの電話で「お産です、すぐ帰って来て下さい」と言われ、「今すぐには帰れないどうしよう」と大声をあげて目が覚めるパターンだ。しかし、その夜は違った。次から次へと食べ物が出てくるのだ。どれも美味しそうな物ばかりである。
多分、絶食という事になっているので、食べたいという気持ちが心のどこかにあるのだろう。その中であんこがたっぷり入った『どら焼き』があった。あまりに美味しそうだったので、我慢出来なくてパクリとかぶりついてしまった。すると大声で「絶食と言ってたのに、何で食べたんですか。しかもそんなお好み焼き位もある大きなどら焼きを・・・」。「ああ、もっと食べたかったのにな~」と呟いた所で目が覚めた。
あぁ、夢か。それにしても美味しそうだったなぁと思いながら、またウトウトすると、寿司、ステーキ、ピザ、もんじゃ焼き、バイキング料理など、次から次へと食べ物が出てくる。
あぁ食べたいなぁと気が付いたら、よだれがタラ~リと出て目が覚めた。さて準備して出かける時間だ。着替えて病院へ。
途中、電線に10羽位のカラスが群がっていて、私を見下ろしている。いつもは「カラスが電線にいるな」くらいしか思わないのだが、その日は検査の結果で最悪な事を言われるのではないかという不吉な予兆のような気がした。そう思いながら病院に着いた。すると、入口に『バリウムよさらば、今は経鼻内視鏡の時代です』というポスターが貼ってあった。
中に入り、受付を済ませソファーに座っていると、蚊が一匹飛んでいた。いつもはすぐに両手でパチンとするのであるが、もしここでパチンと殺してしまったという事で、結果が悪いと言われたら蚊から「ザマみろ」と言われるかもしれないと我慢した。しかしあまりにしつこく周りをブンブン飛ぶものだから、つい我慢が出来なくてパチンとした。
カウンターの上を見ると、パンフレットが置いてあった。それには『医療シリーズ最先端技術で患者にやさしい検査、鼻からの内視鏡検査、検査時の負担を大幅に軽減』と書いてあった。それは『今までの経口内視鏡の辛さがありません。こんなに楽に検査が出来るようになりました』との記事。そうか前に比べると検査も楽に出来るようになったんだなぁと胸をなでおろした。
さて、いよいよ検査が始まった。喉に麻酔のスプレーを3回して、先生が内視鏡を入れようとするので、見たらそれは何と口から入れる内視鏡だった。「何故?」と大声で尋ねたら、前の検査の時、私の食道に気になる所見があったからとの事。軽い麻酔をしてもらっている間「え~、約束と違うよ~」と思ったが、後の祭り。ゲーと吐きそうになり、多少やはりきつかった。
しかし今回は組織検査などもなく、本当にあっという間に終わり「まぁ心配ありませんね」という一言に先生が神様に見えた。
検査が終わり、ベッドの上で麻酔が覚めるのを待っている間、子供達に早速メールを送った。世界一幸せな顔と、ピースサインしたポーズを添付して。