今まで70年間全くメガネとは無縁だった。視力検査をすると両方とも1.5。いつも「視力良いですね」と褒められていた。ところが半年位前から何となく見え辛くなった。特に近くが見え辛いのだ。まぁ70の古希の年齢になったのだから、年相応に老眼になり視力が落ちるのは仕方ないと思っていた。

 TVでハズキルーペのCMを観る度に、あれがあれば良いなと羨ましかった。ところが1万円もする。中々手が出ない。どうするか考えていた時に100円ショップで色々な老眼鏡を売っているのを知った。1.0~3.0まである。試しにかけてみるとよく見える。そこでそれを買うことにした。メガネのツルの所がアズキ色をしているので「僕のはハズキルーペじゃなくてアズキルーペ。100本買ってもようやく1万円だから、超お得」と自慢しながら買った。しかしいつも色々な所に置き忘れるので、仕事場、台所、自室、寝室、玄関、車の中、コートの中、ポシェットの中用として20個位買い求めた。

 ところがそれを忘れて例えば居酒屋でメニューを見ると読めないのである。買い物に行きその製品のラベルの説明を見ようとしても読めない。もう100円ショップのメガネが手放せない。もし忘れてしまうと何も出来ないのである。そこでさすがに目に合うメガネを作ろうと思い眼科に行った。

 そうすると老眼ではない白内障になっているという。それでよく見えなかったのである。良くなる為には手術しかないということで紹介状を書いてもらった。 

 兄も数年前に手術したのだが、初めて手術を受けるので決心するまで1年間迷い、遠くにいる家族を呼び寄せ立ち会わせてようやく手術してもらったという。まるで清水の舞台から飛び降りる心境だったのだろう。オペ後外に出たら、駐車場が眩しくてたまらなかったらしい。よく見えるようになったので、それからは白内障の人には「直ぐオペした方が良いですよ」と言いまくっていたと言っていた。

 さて眼科に行き診察を受けた。するとやはり白内障になっていてオペした方が良いという。そこで予約することにした。白内障のオペをする人が多く、何ヵ月待ちというのを聞いていたので、来年春位かなと思っていたら「来週やりましょう」とその場で決まった。

 その際予定表と注意書きを渡された。それによると、『車の運転、化粧、洗顔、洗髪、入浴、運動はしてはいけない』と注意書きが書いてある。意外と禁止事項が多いのにびっくりした。

 当日家内の運転で眼科医院に向かった。色々術前のチェックが終わりいよいよオペ室へ。兄が「始まる時にメスが見えてそれが怖かった!」と言っていたのを思い出していた。洒落たBGMがかかっているので、意外とリラックスが出来る。「じゃ始めます」と言われ始まった。

 いよいよだと体を硬くしていると色々な機械の音がする。今何をやっているのだろう。まぁ、まな板の上の鯉だから任せることにしようと覚悟を決めた。まだまだかかるのだろうと思っていたら「終わりました」。ほんの4~5分で終わった。「えっ本当に終わったの?」と思った位に早く終わった。きっと神業なのだろう。

 終わって隣の部屋のベッドに横たわって15分。それでもう終わりなのだ。行って帰るまで2時間もかからない。心配で前夜眠れなかったが、色々心配したのは取り越し苦労に終わった。

 自宅に帰り着くと物凄く部屋が明るい。「蛍光灯全部替えたの?」と聞いたら「いや、今までのままよ」とのこと。それほど視野が暗かったということだ。目がよく見えることに感謝の一日だった。

 人間が得る情報の9割は目から入るという。やはり目がよく見えると世界が変わる。白内障でオペが必要だと言われたら、直ぐにしてもらうのが良いと思う。