それはあっという間の出来事でした。気がついたら自転車ごと倒れていました。左右を確認せずに玄関を飛び出した瞬間、左側から来た自転車と衝突してしまったのです。幸いに頭は打たず、相手の若い男の方に起こしてもらいました。

 大したことなくて良かったと思い家に帰ったら左肩甲骨下の所が痛いのです。まぁ打撲だろうとベッドの上で休んでいましたが、中々その痛みはとれず、整形外科を受診しました。レントゲンを撮ったのですが、はっきりした骨折は分からないとのこと。とりあえず湿布薬と痛み止めを貰い帰宅しました。

 そのうちによくなるだろうと思っていたのですが全然よくならない。そこで次の日再び受診し、胸の回りに、コルセットみたいなものを巻くことにし、その方法を習って帰りました。ヒビが入っているらしいので、固定して痛みを和らげようというのです。帰って自分一人でやってみましたがうまく行かないので、家内に手伝ってもらいました。コツは息を吐いて装着することです。何かグルグル巻きにされ、その姿を見たら胸の部分だけミイラみたいに見えおかしくなりました。だけど巻くと何かシャッキとした感じがしました。

 しかしそれから苦難がまっていました。まず横になると痛くて起き上がれない。ベッドで横になるとどうしても痛くて起き上がれないのです。天井からロープでも垂らしてあればそれに掴まって起きられるのでしょうが、そんなのある訳もありません。ベッドから降りるまで体位交換しながら5分位かかります。立ち上がる時は「エィ」と気合を入れないといけないし、その瞬間激痛が走るのです。立ちあがってしまえば歩けるのですが、その姿はまるでペンギン。しかし起き上がってしまえばそんなに痛くはありません。

 ところが咳をするとものすごく痛いのです。まるで内臓をえぐられるような痛みです。思わず「イテ~」と叫んでしまいました。咳でこんなに痛いのは初めてです。咳が出そうになると体を丸くして、なるべく小さく咳をしようとするのですが、そういう訳にもいきません。だが、一番困るのはくしゃみ。これはまるでキックボクサーから思い切り背中の所をけられた感じです。しかも突然くるので態勢をとる暇もありません。

 そんな状態が1週間近く続きましたがようやくここ2,3日状態も軽くなってきました。整形の先生からは「3週間はかかるよ」と言われていたことを考えれば、それより早く治りそうです。

 しかし一つ学んだことがあります。それはこのような状態の時は何と一日が長いことか…。医者からは「時間が薬」と言われたのですが、確かにそうでした。最近一日が過ぎるのが早く『年とると一日が早いネ』と皆に言っていたのに、痛い時は実に長く感じます。まだその日から1週間しか経っていないのに、1年間のように感じます。それじゃ1日を長く感じた方が良いと思っている人には、『同じような経験をしてみて下さい』と言いたくなるのですが、この辛さはやはり経験しない方が良いでしょう。そう思った1週間でした。