小学生の時、一番に思い出に残っているものは何ですか。それは初めて貰った教科書?怖かった担任の先生?ハーモニカ?卒業証書?いろいろありますよね。
 でも何といっても一番思い出に残るものといえばやはり「ランドセル」でしょう。6年間毎日背負ったものですから当然です。
 ランドセルを背負って学校に行く習慣は日本だけしかありません。ほとんどの国では肩掛けカバンやブックエンド手下げの袋を片手に通学します。
 初めてランドセルを背負わせ、小学校に通わせた日を親なら誰でも憶えていることでしょう。
 子どもを玄関から送り出し、手を振りながら元気に学校に走っていく姿を見送る。入学当初はまるでランドセルが走っていく様に見えるのに、卒業前になるとランドセルが窮屈そうに見える。中学校に行くようになると、もうランドセルとお別れだ。
 6年間、苦楽を共にしたランドセルはもう2度と使われることはない。捨てる訳にもいかず、結局押し入れの片隅に片づけられている。
 しかし使わなくなったランドセルって結構かさばる。1~2ヵ月もすると邪魔だから結局捨てられる運命にある。
 ところが6年間使ったランドセルの蓋の部分を利用し、ミニランドセルを作ってくれる店がある。埼玉県戸田市「スキップ」という店だ。 ポケットの背当てのデザインは原型に出来るだけ忠実に、傷やシール、名前などもそのままに用いる。それはなるべく使った人の思い出が甦る様にとのにくいまでの心配りである。
 大きさは10cm四方で、掌にちょうど乗る位の大きさだ。
何せ6年間、毎日登校の度に背負っていたランドセルだ。それには数えきれない思い出が詰まっている。そのミニランドセルを手に取ると、悲しい時、苦しい時、落ち込んだ時、勇気が出てくるに違いない。
 1個作るのに約3時間もかかる。1個8000円。但し手作りの為、年にせいぜい1000個しか作れないので、1年先まで予約が一杯だそうだ。
 そういえば60年前背負っていた僕のランドセル、一体その後どうなってしまったのだろう。急に大切なものを失った様な気がして、とても淋しい気持ちになってしまう。