新型インフルエンザの感染が国内で確認され、その数は関西を中心に爆発的増加が心配されている。インフルエンザというのは冬に流行するのが普通なのに、気温が30℃近い真夏日が続く今の時期に流行するというのは、ちょっと異常である。
1ヶ月前、メキシコで発生したインフルエンザで数十人の死者が出たというのが事の発端だった。そのニュースを繰り返しテレビで伝えていたが、メキシコ国民がブルーのマスク姿で生活している様子を見ながら、何かエイリアンみたいなものが急に地球に現れたような気にさせられた。
豚がその感染源であるという事で、エジプトでは飼われていた豚が全て処分され、それで生計を立てていた人達が怒っていた。日本でも豚肉の売り上げが落ちたり、買いびかえなども見られた。しかし、豚肉を食べても感染しないという事が分かり、少しずつその動きが鎮静化しつつある。
水際作戦と銘打って、メキシコやその後感染が確認された米国から帰国する人達は、機内で簡単なチェックをされ、又出口にはサーモグラフィー付きのカメラが設置され、体温の高い人をチェックしている。そしてついにカナダ留学の高校生から新型インフルエンザのウィルスが見つかり、すぐ隔離された。
厚生省も初めての事なので、その対策は少しドタバタしている。今までと違うのはこの新型インフルエンザも、今までのインフルエンザと同じ症状があるという。発熱、咳、全身倦怠感などだ。だから熱がある人は感染者である可能性が高いと判断し、まず保健所内に設置されたホットラインに電話し、その疑いがあれば、発熱外来を設けている指定病院を受診する。そこで新型インフルエンザと診断されたら、隔離入院という事になる。しかし実際この発熱外来を急に設置するのも、病院指定の問題、人的なこと、予算などが必要で大変な労力が必要である。
そうしているうちに朝テレビをつけると、日本国内で「渡航経験のない高校生が、新型インフルエンザに感染している事を確認」というニュースをやっていた。それから数日のうちにその数はどんどん増え、今や200人以上の人から新型インフルエンザのウィルスが発見されている。
発見されている場所は今のところ関西方面が中心だが、何せくしゃみをすると数メートルまでそのウィルスが飛沫するというので、マスクが飛ぶように売れ、その為マスクが不足し、行列になってマスクを買い求めている姿がニュースで映しだされていた。するとその次の日は、薬局などの店からはマスクがなくなり、『売り切れ』という札がぶら下がっていた。テレビの画面では通行する人のほとんどがマスクをしている。その風景はやはり異常である。
米国などでは数千人という人が感染しているのにマスクをかけている人は皆無だ。というのも、元々米国ではマスクをするという習慣がない。それともう1つ。マスクをしていると顔を隠していると判断され、強盗と勘違いされるそうだ。その姿で銀行などに入ると、すぐ警官が駆けつけ、犯人扱いされるそうだ。
話は変わるが、私も仕事柄学会などで東京へ行くのだが、宮崎に帰ってくると必ず風邪をひく。東京のどこかの人混みの中でうつってくるらしい。そこで、数年前から東京に行く際は、完全密閉型のマスクを持参することにした。電車の中、地下街や人混みの多い場所では必ずそのマスクを着用する。去年はインフルエンザの大流行もなく、上京した時にマスクをしている人も少なく、マスクをして歩いていることに後ろめたさがあったが、お陰で風邪をひかなくて済んだ。
今、マスクが完全な品不足で宮崎でさえ、手に入りにくい状況である。人混みの少ない宮崎では爆発的な発生はないかもしれない。しかし注意する事にこしたことはない。幸いな事に、この新型インフルエンザの毒性は低く致死率も0.5%程度というのがせめてもの救いだ。
しばらくは宮崎でもマスクをした人達が増えることだろう。生まれて初めてパンデミック(爆発的流行)という言葉を知った。やはり未知なものに対し、人は誰でも恐怖心を持つのだろう。早くこの騒ぎが終焉して欲しい。