私の自慢と言えば食べ物の好き嫌いがないこと。唯一あるとすればそれは「セロリ」である。
女性はセロリをバリバリ丸ごと食べるが、とてもあんな芸当は出来ない。サラダにほんの5mm位のセロリが入っているだけで、もう食べようと思わないのである。どうしても食べなくてはならない時は、それを一つ一つ箸でつまみ出し、それから食べる。だからセロリ入りのサラダを食べるだけで30分も掛かってしまうのである。
焼鳥屋でもスティクにしてグラスにキュウリ、人参、大根と一緒に出てくるが、いつも残してしまう。セロリ1本食べれば、100万円上げましょうというのなら頑張って食べるかもしれないが、そうでなければ食べる勇気がないのである。
それともう一つ食べられないものがある。それは「ボンカレー」だ。これだけはあのボンカレーの箱に描いてある黄色い丸を見ただけでもうダメだ。それには深い訳がある。
当時レトルト食品というのは全くなくボンカレーがレトルト食品第1号だった。お湯で温めそのまま御飯にかければカレーライスの出来上がりということで画期的な食物であったのである。
さて、妊娠した家内は、2度流産を経験していた。そして3度目の妊娠も出血をし始め、流産しかかったのである。そこで早速安静入院させることにした。
流産しないようにと祈る気持ちと裏腹に、家内がいないということで、こりゃ毎晩外食して美味しいものが食べられるぞと内心ウキウキしたのも事実である。
ところが1週間もすると出掛けるのも段々億劫になってきた。そこで家で自炊することにした。ところが今まで自慢じゃないが自炊したことがない。まず御飯の炊き方から分からないのだ。そこで家内にメモを作ってもらった。お米はカップ3杯、お水はお米から約2cm位多目に入れること。自動炊飯器のスイッチは横にあるからタイマーを間違いなく入れることなどなど。自信はなかったが、そのままやってみると実に簡単に御飯が炊ける。嬉しくて小躍りしたくなるほどだった。だがピカピカ光っている米粒を見て御飯だけじゃいけないことに気付いた。
魚を買ってきても、それをさばいて食べることも出来そうもない。肉を買ってきてそれをフライパンでチリチリと焼く位は出来そうだ。だがわざわざスーパーに行くのも面倒臭い。
どうしようと考えている時、ボンカレーに気付いた。そうだボンカレーだったら買い置きしておいて、お湯さえあればいつでも食べられる。早速1週間分のボンカレーを買ってきた。お湯を沸しボンカレーを入れる。3分待てば本当に美味しいカレーが出来るのである。
もう、嬉しくて、嬉しくて朝、昼、晩食べていた。ところが1週間位して何故か食が進まなくなった。1週間同じボンカレーばかりだったので飽きてしまったらしい。次の日やはりボンカレーを御飯にかけ食べようとするが、どうしても口に入っていかない。しかもカレーを見るだけで、つわりみたいに気分が悪くなるのだ。次の日もうボンカレーを食べるのを止めた。
それからだ。ボンカレーが嫌いになったのは。ボンカレーのCMを見ただけでパブロフの犬の反射みたいに吐き気に襲われる。今でも同じボンカレーのCMをテレビでやっているが、それを見ただけで二日酔いみたいに「オエッー」とくるのである。
因みに他のレトルトカレーは美味しく食べられるし、CMを見ても別に何とももない。どうやらボンカレーだけに心のトラウマがあるらしい。
しかし最近宮崎県の宣伝しているカレーは、パッケージがボンカレーにそっくりである。パクッたと言われても仕方ない位似ている。似ているのは構わないのだが、それがTVで宣伝される。先日も知事がそれを食べて「美味しい!」なんて言っているシーンが映った。暫くはこのカレーのCMは見たくない。そう思いながらTVを見ている。