人間の顔には数十種類の顔筋があり、それが複雑に絡み合って表情を作る。その無数の組み合わせによって人は笑ったり、怒ったり、悲しんだり、嬉しいという感情、いわゆる喜怒哀楽を表現出来るのだ。

 最近『笑い』を利用して病気の治療をしようという試みが行われている。アラバマ大学のロリッシュ、マイシュクという二人の博士がフェイススケールというものを作った。それは人間の顔の表情を、ニコニコ顔から悲しみのどん底に落ちた時の顔まで20種類に分け、その表情を選んでもらい、今の精神状態を医師や家族に伝えようとする試みである。最も表情の明るい1番から真中の10番目の中にあれば良。11~20番であれば改善が必要という訳だ。

 病気が発見されたり、病名を告げられたりした時人は「何故私だけが」と嘆き悲しむ。逆に病気から快方に向かいつつある時は表情も明るくなる。つまり1番から20番まで、病気の進行によってその番号が行ったり来たりしていることになる。この方法を用い本人の精神状態を判定する。最近では薬効の評価にも用いられている。

 一方笑いを病気の治療に用いることは出来ないかと、笑いを取り入れている病院もある。倉敷市にある病院では、笑う事によって癌患者に勇気を持ってもらおうという試みがなされている。落語をやったり、漫才を見せたりして笑ってもらおうというのではない。あるいはドタバタ喜劇映画を観たり、くすぐって笑わせたりするという方法では勿論ない。

 それはがん患者に週1回身の回りに起こったおかしかった事、面白かった事、笑った話、腹を抱えた話などユーモアたっぷりに話してもらう。おかしい話に患者達は大笑い。そして笑いながら拍手をすることで、お互いの気持ちを高めあおうというのだ。おかしい話などいつもあるものではない。だから1週間、一生懸命面白い話を探しだす。そんな気持ちが患者を前向きな姿勢にさせる。そしてそれがまた小さいながら生き甲斐ともなる。

 笑うことによって今まで塞ぎ込みがちだった心も開かれてくる。そうすると辛い治療に積極的になるそうである。そして癌特有の痛みに対しても効果が現れているという。人だけが持つ笑い。笑いを利用することによって病が吹っ飛んでいくのであれば、これほど安くあがる治療法はない。

 「笑う門に福来たる」これは医療でも言えそうだ。