写真を撮られる際、若い女性は必ずと言っていいほど、人指し指と中指でピースサインを作る。面白いことに、北海道から沖縄まで何処でも見られる光景だ。いつからこんなにピースサインが人々に定着したのだろう。
20年位前まではまだこのピースサインはあまり見られなかったような気がする。人々がこぞってそれをするようになったのは、写真を撮られる時の一つの照れ隠しなのかもしれない。
例えば、ある歌手はギターをかきならしながら歌うのはあまり恥ずかしくないという。ところがマイクだけ目の前にあると恥ずかしくてたまらない。だからギターはそれほど上手く弾けないが、ギター片手に歌ってないと落ち着かないのだとか。
さて、我々の少年時代に流行ったポーズは、赤塚不二夫の漫画『おそ松くん』の「シェー」のポーズだろう。
当時中学生だった私は、学校が終わると僕ら少年のたまり場となっていた友人の家に必ず寄った。彼の部屋には所狭しと漫画の本が置いてあった。少年マガジン、少年サンデーなど少年向け雑誌である。友人数人と、それらの雑誌を読みながらおやつと飲み物をごちそうになっていた。今でいうマンガ喫茶みたいなものだ。
それに比べ私の家では、漫画を読むなんてとんでもないという雰囲気で、漫画など置いておいたら、父に即ゴミ箱に捨てられた。兄弟が多い我が家では、自分だけの部屋などあるわけなかった。つまりゆったりと漫画を読むスペースがある自分の部屋なんて、夢の又夢だったのである。
そんな少年時代、流行っていたのが「シェー」というポーズである。当時の少年マガジンに連載されていた『おそ松くん』の中におフランス帰りの出っ歯で「イヤミ」というキャラクターが出てくる。その「イヤミ」が驚いた時に「シェー」という奇声を発するのである。
奇声を発するだけではなく、右手と上げ90度に曲げ、左手は胸の前にやり90度曲げる。同時に左足を90度に曲げ「」の様なポーズを作るのである。新しいことを発見すると「シェー」。質問に答えられないと「シェー」。後から肩をたたかれると「シェー」。怒られても「シェー」である。もちろん写真を撮る時も全員「シェー」。
しかしこれだけ流行った「シェー」も時代とともに忘れ去られてしまった。
先日、あるテレビ番組で、団塊世代の人達の家を訪問しているのがあった。その家で昔のアルバムを見せてもらい、そこに「シェー」の写真があるかどうか調査するという内容であった。すると不思議なことに、どの家庭でもその当時少年達は「シェー」のポーズでカメラにおさまっていた。ちなみに我が家でも中学時代のアルバムを開いてみると、仲間揃って必ず「シェー」の格好をしている。
時代と共に、世のあらゆるものが流行っては消えていく。今の若者が、無意識にしているそのピースサイン・・・これからどんな風に変化していくのであろうか。