院内の患者様向けに発行しているコアラ通信がついに1000号を迎えた。
第1号は平成2年1月1日である。コアラ通信の名前の由来は、
開業当初のシンボルマークがコアラだったからである。
何故コアラ通信を作るようになったのか?
それは当時忙しすぎて充分に患者さんと対話が出来なかったからだ。
外来も入院も今の何倍もの人数で、椅子に座れない人達が廊下に並んで立って待っている。
ゆっくり話が出来る雰囲気はなく、私の考えている事や私の日常生活が伝わらないので、
それを知ってもらいたいと考え作ったのである。
 最初はガリ版風で、手書きで方眼紙のマスに字を埋めていくやり方だった。
それに私がイラストを入れ、まるでタブロイド版というものだった。
しかししばらくするとワープロで打つようになり、今のスタイルが完成したのだ。
最初はエッセイと言っても、400文字位の短いもので、文字も稚拙であった。
まるで小学校の文集みたいなものだった。それを妊婦健診の度に手渡すようにしたり、
待合で自由に取れるようにしたりした。
そのコアラ通信をまとめ本にしようと第1弾『うぶごえ』が誕生した。
その後『女が女を知る本』『こもれび』『男がお産をする日』『キッズ通り1/8』
『パンドラのおもちゃ箱』『GO!GO!パラダイス』『心ぽかぽか』『戦争と人間』
『二十一世紀への提言』『夫婦』『未来への処方箋』『投稿マニア』など13冊の本になった。
 書いているうちに、少しずつ文章の基本である起承転結というものが分かるようになってきた。
最後のオチでホロリときたり、ニタッと笑ったり、力づけられたりする。
言葉ということについても少し慎重に選ぶようになった。
その為テレビを見たり、ラジオを聴いたりすると、言葉使いが気になっていった。
一つの言葉が勝手に一人歩きし、誤解を招くこともある。
命取りになる事もある。それがよく分かる様になった。
 よく「ネタに困りませんか」と尋ねられる。しかしほとんどの場合ネタに困る事はない。
というのもネタ帳が至る所に置いてあり、ネタが見つかるとそれをメモする。
メモにと言ってもほんの一行位である。
例えば『カレーライス』と書いておけば、今まで食べたカレーの事を頭に浮かべて、それを書く。
 一つの話が1200文字程度である。短くてもいけないし、長くてもいけない。
ネタが決まると書きたい大まかな内容を大学ノートに思いのままに書きなぐる。
 何年か前までは万年筆、最近は百円ショップで見つけてきた
とても書きやすい魔法のボールペンで書いている。
書くのは夕方から夜にかけてである。書く時間はだいたい30分位。とにかく一気に書く。
何回も分けて書こうとすると流れが悪くなるので、とにかくノートに書きなぐるのである。
次の日それにもう一度目を通し、流れが悪い個所や意味の分かりにくい所は修正する。
完成したらそれを秘書にパソコンで打ってもらう。
原本はものすごい汚い字なので、それを読んで理解して打つのも大変なのだが、
最近ではどんな読みにくい汚い字でも読めるらしく、きちんと打ってくれる。
それを何人かの人達に見てもらい、チェックして出来あがりだ。
 エッセイを書くのはエネルギーが要る。ネタ探しに始まり、それを文章にする。
だがその「何でも見てやろう、何でも知ってみたい」という好奇心が
自分の心を若く保っている一つの要因ではなかろうか。
これからも続く限りコアラ通信を続けようと思う。ネタが尽きるまで…。
 しばらくはまだ続けられると思う。その理由は読んで下さる方がいらっしゃるからである。
コアラ通信ファンがいる限り、体が続く限り続けていきたい。
まさにコアラ通信は不滅なのである。