先日、新聞の『人生相談』のコーナーを読んでいたら次のような相談が載っていた。
『ぼろアパートに住む30歳代女性。夫はとてもケチ。車は乗らず週末は徒歩で激安スーパーをはしごし、拾った大根の葉を持ち帰っておかずに使うほど。電気がもったいないと照明をつけないので部屋は暗く、夏、体が煮えるように熱くなってもエアコンをつけません。トイレは風呂の残り湯で流します。帰省のときは新幹線ではなく、安い夜行バス。先日帰省先で水族館を訪れたのですが、中に入らず、入り口から眺めるだけで帰ったのは悲しかったです。共働きで子供はいません。経済的にも余裕はあるので、そこまでケチになる必要はないのです。夫に話してもいつもうやむやにされます。貧しい家庭に育ち、お金を大事にする習慣が体に染み付いているのでしょう。友達からは「そんなにお金を貯めてばかりでどうするの」と心配されています。私だって時には人並みのご褒美が欲しい。むなしいです』
これを読んでつい笑ってしまった。実は私もかなりのケチである。例えば歯磨きのチューブ。最後までクルクルに巻き絞り出したら、次にハサミでフタの近くを切り取る。もう一度ビニールの部分をグッと押すともう1回は使える。次の日は切ったチューブの部分に溜まったのを歯ブラシにつける。これは2回分くらいある。つまり普通だったら、使い終わり捨てるのに、3回分多く使うということになる。時々、切ったチューブをそのままにしておいて家内が要らないと思い捨てることがある。そうするとすぐ夫婦喧嘩になる。「あと1回まだ使えたのに!!」と言うと「あら、そう知らなかったわ」と呆れ顔である。私としては『あと1回使える!!』という気持ちなので余計に悔しいのである。
わさびのチューブはどうするか?これはクルクル巻きにしてもう出ないなと思ったら捨てないで、チューブに息を吹き込み膨らませ、そのまま醤油につけ醤油を吸わせるのである。これで2回分くらいは使える。自分でもミミッチィと思っても、つい気が付いたらやっている。
先日、履き慣れたサンダルの底がパカッとはがれてしまった。まだ使えるとガムテープでその部分をグルグル巻きにして履いていたら、次の日買い物している時にバラバラになってしまい、足を引きずりながらひき返してきた。
朝、新聞が配達される時、薄いビニールの袋に入っている。それをカッターで慎重に切り、ちょっとしたゴミ袋にする。枯葉などを入れるにはちょうど良い大きさで重宝する。
病院の医療器材も大切に使っている。例えば超音波で使用している椅子は理髪店で使われているのと同じタイプの背もたれ式の椅子。座ったら電動で頭が下がるように出来た椅子であるが、開業して37年。まだまだ現役である。保育器も超音波も内診台も分娩台も手術台も外来の診察室の椅子も、まだ2代目である。クスコ膣鏡は父が使っていたものを最近まで使用していたし、ヘガール頚管拡張器は父が60年以上前に使っていたのを今も大切に使っている。
器械は全てリースである。普通リースというのは5~6年間で再契約する事が多いのだが、契約が切れる頃「新型が出たのでそろそろどうですか?」といつも勧められる。だが再リースし、最終的に買い取ることにしている。というのもリース料が10分の1になるからである。だから最近は医療器械屋のセールスマンも訪れることもなくなった。何故ならいつも「まだ充分使えるから要りません」と断わられると分かっているからである。断る度にこの病院の院長はケチだなぁという顔をされる。
しかし考えてみればこれらの事はケチではなく倹約かもしれない。いやケチではなくエコである。そう考えれば何となく格好良い行為で、今話題のSDGsを昔から行っているのかもしれないと自分で自分を褒め上げている。