私にとって今まで一番重宝したもの。それはカセットテープである。高校時代に音楽を録音する手段として重宝した。大学に入ると友人のレコードを借りまくりカセットにダビングした。レコードは家の中でしか聴けないのに対し、カセットはどこででも聴ける。そこでデートの時はいつもラジカセを持ち運んでいた。
当時始まったFM番組を録音するのが楽しみだった。当時はFM雑誌が沢山出版されており、それに曲目が細かく書いてあり、それを見ながら録音するのである。いわゆるエアチェックというものである。
79年にテープの携帯カセットレコーダー『ウォークマン』が登場した。売り出された時は高価であったが、2、3年すると若者でも買える値段になり買い求めた。ヘッドフォンを耳に当て通学するのが流行になり、私も通学中はいつもそれを聴いていた。
それから大きなラジカセが流行った。大きさは幅が60cm以上もあり、それをキャンプなどに担いで行き、大音量でかけながら楽しんだ。と同時にダブルカセットというものが流行った。それはカセットテープをダビング出来るもので、好きなテープを何本でも作れるので便利だった。
そのうちにCDレンタル屋が出来、CDを借りてはカセットにダビングした。レコードやCDを買わなくてもいつでも好きな曲が聴けるので重宝した。しかしそんなカセットもYouTubeなどの音だけでなく、画像も観られるというものの出現で姿を消していった。
5、6年前はカセットテープが製造中止になり、家電量販店でも販売していない時期があった。そんな時に300本位まとめて注文したこともあった。
今でも生まれたばかりの赤ちゃんの泣き声を録音するのに使用している。開業して36年間ずっとそれをしているので、1万本以上は買った計算になる。最近は私みたいに年配の方の為に、再びカセットテープを販売している。
しかも嬉しいことに若いミュージシャンがレトロ感覚で、CDではなくカセットテープに演奏を録音し発売している。カセットテープにレトロ感を感じ、それが流行しているのだという。
随分前、自転車の荷台の後ろに大きなラジカセを括り付け走っていた。すると100m位先にいる人が驚いて振り返る。そこで迷惑行為だと反省して今は前カゴに小さいラジカセを入れてそれで楽しんでいる。それでも10m位先の人がびっくりしてどいてくれる。まぁ変なおじさんのなだ。とにかくカセットは今でも私の人生そのもの。
先日そのカセットを開発したオッテンスさんが94歳で亡くなった。彼がいなかったら、私の人生も変わっていたかもしれない。彼の冥福をお祈りすると同時に、彼の発明に感謝したい。